宿題の認知科学

18-10+5の答えと、迷子になった選手の愛犬の謎

言語学者・広瀬友紀さんの新連載です! 小学生の息子の宿題や答案をとりあげて、「あるある」から「斜め上」の間違いまで、認知科学の知見から迫っていきます。第1回は、「国語と算数が、意外なところでつながる」というお話。

 では本題です。「18-10+5の答えと、迷子になった選手の愛犬の謎」……って、つい気取って村上春樹の小説みたいなタイトルをつけてしまいましたが、「宿題の認知科学」、最初の話題は、意外なところでつながっている、算数と国語の話です。

 まずは算数。うちの息子はよく、「こんな点数実在するって思わなかったわ!」みたいな点を平気でとって帰ってくることしばしばなので、計算問題全問不正解でもあまり驚かないのですが……。

 これを見て足し算引き算もできないんか〜い(小4のときです)!と一瞬思いつつ、同時に「これ、なんで間違ってるんだっけ?」って、私、大人なのにちょっと混乱しました。

 18-10+5の答えは何だろう。3では間違いなのか。正解は13です(修正し忘れたまま)。11-5-4は、最初10って書いてバツつけられ、2になおしています。

 最初の問題18-10+5は、左から順番に、18から10を引いて、そこに5を足せば正解の13が導けます。つまり(18-10)+5。だけど、じゃあ3はデタラメなのかといえば、二つ目と三つ目の10+5を先にやって、それを18から引けばちゃんと3にもなります。つまり18-(10+5)。それはどうして間違いなんだろう?

 次の問題11-5-4も同様に、左から順番に、11から5を引いて、そこからさらに4を引けば正解の2が得られます。(11-5)-4ですね。これも同じく、11-(5-4)というふうに、5-4を先にやって、それを11から引けば10でもよくない?

 どうやら三つの要素の足し引きにおいて、一つ目と二つ目の要素の間(つまり一つ目のほうの演算記号)が引き算記号である場合には、どこを先に計算するかという順番によって答えが違ってくるんですね。

 (18 - 10) + 5 = 13
 18 - (10 + 5) = 3

 (11 - 5) - 4 = 2
 11 - (5 - 4) = 10

 ちなみにこの一つ目の演算記号が足し算でさえあれば、二つ目は足し算であっても引き算であっても順番によって答えが変わらないみたい。

 (18+10) + 5 =33
 18+(10 + 5) = 33

 (18 + 10) - 5 = 23
 18 + (10 - 5) = 23

 一つ目が引き算のときだけ、カッコつけないと正解が決まらないんだぜbaby……(と、カッコつけてみました)。

 何を当たり前のことを、と思われる方もおられるでしょうが、私にはこれは(少なくとも18-10+5のほうは)、直感で自明のことではありませんでした。子どもがこのプリント問題で間違い散らかさなければ、おそらくこの先ずっと気づかなかったことなのです。

 このように、答えがひとつに定まらないという状況を避けるために、教科書的には「×や÷は、+や-より先に。ただしカッコでくくられていたらそこをいちばん先に。それ以外は左から順番に」と定められています。ただ、この「それ以外は左から順番に」という決まりごとは、おそらく人間の定めたあくまで便宜上の決めごとであって、冒頭の問題に答えがほんとうは二つありうるということ自体を打ち消すものではないでしょう。

 そんなことを考えながら、少し前に目にとまった新聞記事を思い出しました。

 「迷子になった選手の愛犬 拡散に次ぐ拡散、最後には発見」
 (Jリーグ人気選手の愛犬が行方不明になったが、SNSの投稿が拡散したことがきっかけで無事に見つかったという内容/「朝日新聞デジタル」2020年2月24日)

 これを見てつい「サッカー選手が迷子になったんか? いい大人だろ? どういう事態?」ってぎょっとしたんですが、よく読んだら迷子になったのはワンちゃんのほうでした。そりゃそうか。

 ここで、ここまでの算数の話と国語がつながります。

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