■新たなチャレンジに向けて
村田 いまは新しい作品を書かれているんですか。
李 書いていますけど、いつできあがるかはわかりません(笑)。
村田 わたしもそうです(笑)。
李 たぶん二五〇枚くらいの中編になると思うんですが、これまでは現実の世界を背景に書いてきましたけど、今度は架空の世界を書いてみたいと思っています。自分のなかで、セクシュアルマイノリティの実相をリアルに書くのは『ポラリス』で一区切り着いた気がしていて、今度はもう少し違うものを書こうと思っています。
村田 わたしはへんてこな設定の小説をひたすら書いています。自分がこの日本という国で女の子であるという苦しさをずっと感じてきたことを書こうとしているんですが、自分なりにリアルに書いていくとやっぱりなぜかすごく変な設定になってしまって、おかしいなと思っています(笑)。
たとえば、わたしは料理が出来ないんですけど、それはこの社会で若い女の子が料理を作ることを誰かが喜ぶことの圧が異常に高いのがいやで、料理をするのが苦しかったんです。そういう類いのあれこれをぜんぶ書き留めておきたいと思って書いているのですが、どんどん設定が変になってしまって、担当さんを困惑させてしまっています。
李 村田さんの小説は設定は突拍子もないけれども、実際に語られていることはこの社会のリアルな真理というところがあって、料理で言うと「素晴らしい食卓」にすごく共感を覚えました。わたしはとても偏食で好きなものと嫌いなものの差が激しくて、ひとが美味しいというものが食べられなかったりするので、ここで書かれた「食事をするということは文化を摂取するということだ」とか「いまは自分の好きなものを食べられるようになった時代だよ」ということを、たしかにその通りだと思いました。
村田 そんな風に読んでもらえるととても嬉しいです。
李 新作も楽しみにしています。今日は有難うございました。
村田 私も楽しみにしています。近いうちに、リアルでもお話ししたいと願っています。有難うございました。
(2020年5月5日、Skypeにて収録)