ちくまプリマー新書

「地方」に人と人がつながる「場」をつくる
ウェブマガジンが生みだした新しいコミュニティ

いま、余白がある「地方」にこそ可能性が広がっている。これまでの居場所を違った角度で見つめなおすと、新たな面白さ、そして課題と魅力が浮かんでくる――。ちくまプリマー新書『地方を生きる』より本文を一部公開します! 福島テレビを退職して上海に移住した著者は、刺激的な経験を経て、地元・いわき市小名浜に戻ります。培った経験をもとに「ローカル・アクティビスト」として現場の課題に取り組むことになり…。(写真撮影=橋本栄子)

 ローカルのメディアやアートプロジェクトなどに詳しい編集者の影山裕樹さんは、著書『ローカルメディアの仕事術』(学芸出版社、二〇一八年)のなかで、「ローカルメディアの役割は〝異なるコミュニティ〞をつなぐこと」だと語っています。メディアを通じて、地域の固定化したコミュニティや人の流れが撹拌され、自分たちが暮らすまちの魅力や資源の再発見を促し、新しい交流やビジネスが生まれたり、人口流出や高齢化などの地域課題を自分ごととして共有する手段になる。影山さんは、さまざまな事例とともに、ローカルメディアの意義を提示しました。

 これまでは、地域づくりの担い手といえば商店主や会社経営者が組織する商工会や青年会議所のようなコミュニティでした。しかし最近では、既存の組織に属さない移住者や商店主が、新たな文脈を持ちながら、新たな担い手として、地域づくりのコミュニティを作り始めています。おしゃれでデザイン性の高いサービスを提供する新しい担い手たちが、これまでの発想とは違った形で魅力を創出している地域は、全国各地にあります。

 その新しい担い手たちはローカルメディアで紹介されることで認知されていきます。そして、二人目、三人目と新しい担い手がメディアに取り上げられることで、なんらかの価値観を共有した集団のように見えてくる。

 とはいえ、メディアの制作者が何も考えずに取材していたら、ローカルメディアは、その大事な役割を果たすことができません。大事なことは、取材しっぱなしにするのではなく、取材した人と取材された人の間にリアルな関係をつくることです。取材を通じて知り合った人たちが関係を深め、友人となり、また別の取材された人がその輪に加わることで初めて、メディアを通じてコミュニティが立ち現れます。そこでは、自分を「地域の外部にいる取材者」ではなく、「地域づくりの内側にいるプレイヤーのひとり」だと自認することが必要です。

 カギを握るのが「インタビュー」だとぼくは感じています。ぼくの場合は、気になる人がいるとすぐに取材を申し込み、なぜ小名浜で、なぜその業態を選んだのか。どのような思いで取り組んでいるのか。その人の人生そのものについて話を聞くようにしていました。質問内容はいたってシンプルですが、シンプルなだけに、その人本来の姿を知ることにつながります。

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