ちくまプリマー新書

読むだけで相対性理論がわかる「小説」が登場!
『16歳からの相対性理論――アインシュタインに挑む夏休み』より本文を一部公開

「なぜ光の速さは変わらないのか」「どうして重力は物を落とすのか」「時間は絶対的なものなのか」……小説を楽しみながら相対性理論がわかる一冊『16歳からの相対性理論――アインシュタインに挑む夏休み』(ちくまプリマー新書)の内容を一部公開! ひょんなことから科学の世界に足を踏み入れた高校一年生の数馬と、物理学の研究者であり普段はアメリカに暮らしている数馬の父親・宗士郎が、「光の速さ」の不思議について語り合う場面です。

「一番極端なのが光だ。光は、前向きに飛ばそうが、後ろ向きに飛ばそうが、自転車に乗って測ろうが、そばに立って測ろうが、どれも、みんな秒速2億9979万2458メートルぴったりで、変わらないんだよ」

「そんなこと言われても……」

「気持ちはわかる。でも、それが事実なんだ」

「頭のなかで考えてやる思考実験だから、そう考えたらそうなんだってこと?」

「ちがうよ」

「え?」

「実際の実験で証明されたことなんだ」

「実験で?」

「1887年、アメリカの物理学者のアルバート・マイケルソンとエドワード・モーリーが実験して、光は、動いてるものからどんな方向に発せられても、計測したらいつも同じ速度だってことがわかったんだ。この発見は、あとから『光速不変の原理』って呼ばれるようになった。マイケルソンはこの発見の功績が評価されて、1907年にノーベル賞を受賞した。もともと彼はちがうことを証明したかったのに、偶然、とんでもないことを発見しちまったわけだから、科学の世界によくある『セレンディピティ』ってやつなんだけど……」

「せれん……」

「その話はいいよ。とにかく、どんな状態で発せられた光でも、誰が測っても、光の速度は変わらないんだ」

「じゃあ、光の速さが何十年経っても変わらないっていうのも、それが理由?」

「理由の半分は、そういうことだ」

「半分?」

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