ちくまプリマー新書

読むだけで相対性理論がわかる「小説」が登場!

『16歳からの相対性理論――アインシュタインに挑む夏休み』より本文を一部公開

「なぜ光の速さは変わらないのか」「どうして重力は物を落とすのか」「時間は絶対的なものなのか」……小説を楽しみながら相対性理論がわかる一冊『16歳からの相対性理論――アインシュタインに挑む夏休み』(ちくまプリマー新書)の内容を一部公開! ひょんなことから科学の世界に足を踏み入れた高校一年生の数馬と、物理学の研究者であり普段はアメリカに暮らしている数馬の父親・宗士郎が、「光の速さ」の不思議について語り合う場面です。

「数馬は『メートル原器』って、聞いたことあるか」

「メートル……げんき?」

「ものの長さを決めるために、1メートルの長さはこれですっていう国際的なモノサシみたいなものなんだけど」

「あぁ、テレビのクイズ番組かなんかで、聞いたことあるよ」

「あれって、いくら硬い金属でつくっても、所詮は金属だから、温度が高くなったら膨張するし、低くなったら縮む。季節や場所によって、長さが微妙に変わっちまうんだ」

「そうなの?」

「あぁ。だから『温度が変わっても長さの変わらないもの』を基準にできないかって考えた末、1983年、誰がどんな状態で測っても変わらない、光が真空中を1秒間に進む長さの2億9979万2458分の1を1メートルって決めたんだ……わかるか」

 数馬が小さくうなずくと、宗士郎は満足そうな笑みを浮かべた。

「だから、光の速度はこれから何十年経っても、秒速2億9979万2458メートルぴったりのままなんだ。どんなに科学が進歩して、速度計の精度が上がっても、光の速度そのものが長さを決める基準なんだから、変わりようがない。それが理由なんだ……どうだ、わかったか」

 数馬がうなずくと、宗士郎は急に真面目な顔になり、

「ただ、そうなると、ちょっと困ったことが起こるんだ」

「困ったこと?」

「実験で『光速は変わらない』って発見した当のマイケルソンも、その困ったことが解決できなくて、ずっと悩んでたくらいだから」

「実験で証明した本人が悩んでたの?」

「マイケルソンだけじゃない。当時の科学者全員が頭を抱えてしまったんだ。さっきの例で言うと、自転車に乗ってるやつが測っても、そばで立ってるやつが測っても、光の速さ、つまり1秒間に光の進む速度が変わらなかったとしたら、すごく困ったことが起こってしまうから……」

「ちょっと待って」