ちくまプリマー新書

読むだけで相対性理論がわかる「小説」が登場!

『16歳からの相対性理論――アインシュタインに挑む夏休み』より本文を一部公開

「なぜ光の速さは変わらないのか」「どうして重力は物を落とすのか」「時間は絶対的なものなのか」……小説を楽しみながら相対性理論がわかる一冊『16歳からの相対性理論――アインシュタインに挑む夏休み』(ちくまプリマー新書)の内容を一部公開! ひょんなことから科学の世界に足を踏み入れた高校一年生の数馬と、物理学の研究者であり普段はアメリカに暮らしている数馬の父親・宗士郎が、「光の速さ」の不思議について語り合う場面です。

「ん?」

「いま、何時?」

 宗士郎は腕時計に目をやる。

「いま、7時ちょっと前だ」

「やばい! 母さん、帰って来る」

 数馬は自転車に駆け寄ると、スタンドを乱暴に蹴り上げながら、

「続きは今度、ゆっくり聞くよ」

「おい、待てよ。まだ、光の速度が不変だと困ったことが起こるって話の途中だぞ」

「大丈夫。どんなことがあったかしらないけど、俺は困ったりしないから」

 数馬は自転車を引いて、土手を上り始める。

「こんな中途半端で終わるのは気持ち悪いから、必ず連絡してくれ」

 土手を上りきると、数馬は砂利道を見下ろした。

 すがるような目をした宗士郎が、一生懸命、数馬に向かって手を振っている。

「約束するよ、父さん!」と叫んで、自転車にまたがり、ペダルを蹴った。

 父さん――とじかに呼びかけたのは、空港で見送って以来、3年ぶりだった。


 

科学が苦手な16歳の数馬は、理系女子のシュレと出会う。彼女を助けるため、世界の謎を解き続け、やがて宇宙の真理へと誘われる――夢、恋、将来に悩む主人公と個性豊かな仲間たちが織りなす学園青春ストーリー。