苦手から始める作文教室

第15回 書いた文章を見直してみよう

作文の磨き上げ方①

書いたものをもっとよくするとしたら、どんなことに着目して手を動かすのがいいでしょうか。津村さんご自身の、文章の見直しの方法を紹介しながら、考えます。

 今回の主題は、「文章のブラッシュアップについて」です。ブラッシュアップ(磨き直す)という言葉は担当編集者さんからやってきたもので、わたし自身は初めて文章に関して使用します。「磨き直す」と言うとプレッシャーを感じると思うのですが、「見直す」というぐらいに受け取っておくと気楽だと思います。

 作文を書いてみたとして、それをどんなふうに見直すと良いでしょうか? 実際的には、まずは、まちがっている漢字やひらがなのチェックだと思います。ふつうの授業で、原稿用紙に書く作文なら、わたし自身はそれで充分だと思います。一度書いてしまった文章を、規定時間内に消してまた書き直すというのは大変なことですし。ただ、時間制限のない個人的な作文だったり、時間制限はあっても手書きでない文章だったりして、自分なりにより良い作文がしたい、と思われるのであれば、見直しもそれなりに悩みの多い作業になってくると思います。

 わたし自身は、担当編集者さんに自分の文章を送る時は、必ず一度は見直しをします。自分で読み直して、変だな、と思う文をちょこちょこ書き換えます。わたしはとにかく「~だが、~である」という文を書きがちなので、それを書き換えることが多いです。この文章で言うと、少し前の〈「磨き直す」と言うとプレッシャーを感じると思うのですが、「見直す」というぐらいに受け取っておくと気楽だと思います〉という文が、「~だが、~である」(→「~ですが、~思います」)に相当します。どれだけこれが自分のくせだと自覚していても、この展開の文は自分の文章の中には山ほど出てきます。それを毎回、下手くそだなあと思いながら別の表現に直してごまかします。具体的には、

・「磨き直す」と言うとプレッシャーを感じると思うのですが、「見直す」というぐらいに受け取っておくと気楽だと思います。

→「磨き直す」と言うとプレッシャーを感じると思います。【なので/ですから】「見直す」というぐらいに受け取っておくと気楽だと思います。

 というような感じで書き換えます。お気付きになった方もおられると思うのですが、【なので/ですから】で、わたしは元の文を二つに分割しています。見直しの段階で、文をわかりやすくするために分割することもよくやります。長い文がわかりにくいからだめというわけではありません。長い文でも、わかりやすく上手に書ける人は書けると思います。ですが、長い文と短い文なら、自信がないうちは短い文を選択する方が、文章を書いたり見直したりする負担が少ないようにわたしは思います。

 他によくやっていることは、同じ文の中に主語を二つ書いてしまうことです。

・【わたしは】は寒い日に買い物に出て信号待ちをしていて、つくづくマフラーは大事なものだと【わたしは】思った。

 わかりやすく書くとこんな感じです。こういう場合は、わたしは二つ目の【わたしは】を残します。どういう判断をしているかというと、文全体でわたしがやっていることは「思った」なので、それに近付けています。そして実はこの文章は、【わたしは】はなくても成り立ちます。ないほうがすっきりしていると思えるかもしれません。いずれにしろ、しっくりくる書き方をしたら良いと思います。

 最初のほうにも書いたように、授業で書く作文の「見直し」は、漢字がまちがっているかどうかぐらいでいいと思います。今回は、わたし自身の文章のくせにのっとった形で、具体的な見直しの話をしていますが、どういうミスをしやすいかは千差万別で、人によって違うと思います。自分で、自分の文章のこういうところがだめかもしれない、と思うようになってきたら、それはたくさん文を書いている証拠かと思いますので、よかったらそのまま書き続けてみてください。

 「見直す」ということは、文章を「これまでより良いものにする」ということだと思うのですが、そうするためには、「良いもの」の基準がないと難しいように思います。「良いもの」という言い方が身構えてしまうものなのだとしたら、「基本」と言い換えても大丈夫かもしれません。自転車の乗り方や、えんぴつの持ち方のようなものです。「基本」は、誰かから教えてもらったり、お手本を見ながら同じようにやることで身に付きます。さいわい、作文を書くことは、特に誰かに教えてもらわなくてもできます。お手本の見よう見まねでできるわけです。そして、文章を書く、作文を書くことのお手本は、そこらじゅうにあります。文なら何でもかまいません。好きなアーティストの歌詞でもいいし、友達のツイートでもいいし、ウェブサイトの記事でも、もちろん図書室の本でも大丈夫です。

 一個の作文をブラッシュアップすることが見直しをすることに相当するとしたら、自分の文章全体をブラッシュアップするにはどうしたらよいのでしょうか? ということについて、自分なりに思うことを次回では書きたいと思います。

 

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