ちくまプリマー新書

なぜこの地球に我々は存在するのか……現在考えられている生命発生のシナリオ
『なぜ地球は人間が住める星になったのか?』より本文公開

宇宙の進化の中で地球はどのようにして生まれたのか。そして地球で生物はどのように発生し、進化を遂げたのか――地球と生命の共進化の歴史を探る『なぜ地球は人間が住める星になったのか?』(ちくまプリマー新書)が好評発売中です。本書より生命の起源に迫るパートを一章分、一挙公開します!

生命の起源は単一か

 タンパク質のもととなるアミノ酸を指定するDNAの暗号(コドン)が、現在のどの生物でも同じということは、われわれ地球上の生物は、遠い昔に共通の祖先(単一の祖先)を持っていたということを強く示唆しています。

 もう一つこれを示唆するのが、アミノ酸の構造です。同じ構成要素を持っているアミノ酸の中には、その立体的な構造がちょうど右手と左手の関係(鏡に映した関係=鏡像)になっているものがあります。そのタイプによってL型、D型といいます。化学的な性質はまったく同じはずなのに、なぜか地球の生物はL型のアミノ酸しか使っていません。しかし、宇宙起源のアミノ酸、例えば炭素質コンドライト(隕石の一種)から検出されるアミノ酸は、L型もD型も等量です。つまり、最初の生命が利用したのがたまたまL型のアミノ酸だったために、それを祖先とする生物がL型を使い続けたという可能性が高いということになります。

図8 アミノ酸の一種アラニンの立体構造互いに鏡に映した関係(鏡像)になっています。鏡像は右手と左手の関係のように、3 次元空間の中ではどのようにしても同じ形になりません。

 こうしたことから、現在地球上にいるすべて生命は共通の祖先があって、それからわかれたものと考えられます。ただ、地球上での生命発生はわれわれにつながる1回限りだったのか、それとも何回もあったが他の系統は誕生してもすぐに滅んでしまったのかはわかっていません。

イラスト:たむらかずみ

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