みんな”普通

第11回 幸せになるためのとっておきの行動

幸せは運任せ? でも、運も半分くらいは自分でどうにかすることができる!

突然だけど、みんなは幸せになりたいだろうか。僕は当たり前にそうおもう。でも悲しいかな、幸せはけっこう運任せだったりする。実力とか努力より、運次第。好きな趣味を見つけるのも、やりがいのある仕事に就くのも、愛する人と一緒になるのも、運に左右される。

こんなことを聞かされると、「なんだ結局ガチャかよ」ってやる気をなくしちゃうかもしれない。でも安心してほしい、運っていうのは天に与えられるものでもないし招き猫がチョイチョイして呼んでくれるものでもないから。少なくとも半分くらいは、自分でどうにかすることができる。

なぜかというと、運は人が運んできてくれるからだ。だれかがおもしろい仕事を紹介してくれたり、おもしろい人とつなげてくれたり、おもしろい場に誘ってくれたりしたらかなりラッキーでしょ? だからおおざっぱに言えば「いい人間関係=いい運」なんだけど、この「いい人間関係」はある程度、自分でコントロールできる。

そのためにはまず、自分が「一緒にいて気持ちがいい人」になろう。具体的に言うと、ポジティブな人間になる。これが幸せへの第一歩だ。

 

たとえば僕は、血液がんの患者です。だから同朋というか、がん患者さんの知り合いがまあまあ多い。それでいろんな人と話す中で、告知から人生をいい感じに運んでいける人と一気にバランスを崩しちゃう人に二分されることに気づいた。

じゃあどんな人がいい感じになってるんだろうって考えてみると、みんな例外なくポジティブなんだよね。会ったあとに疲れない。むしろ元気になれるし、なにかあったらサポートしたくなる。だからそういう人の周りにはいい人が集まって、楽しそうに暮らしている。

一方で、バランスを崩すのはだいたいネガティブな人だ。ネガティブな人は、目の前の人のエネルギーをダイソンみたいに吸い取っていく。恨み節が泉のように湧き出るし、つらい人に対して「自分のほうがつらい」って攻撃するし、サポートしようとしても手を払いのけるし。僕はそういう人には「大丈夫?」って言いながら後ずさってドロンしちゃうんだけど、そういう人はその後、メンタルを病んだり変な治療法に引っかかったりしている。

「がんに罹った」って状況は同じでも、本人のあり方次第で集まってくる人の数や種類がぜんぜん違ってくるの。ポジティブな人はいい人がたくさん集まってくるから、運がよくなっていく。ネガティブな人は、だれもいなくなるか、変な人がたくさん寄ってきて運が悪くなる。シンプルな話でしょ?

ただ、ひとつ気をつけてほしいのが、アホみたいなポジティブもネガティブと同じくらい危ういってこと。ガソリンがすっからかんなのに「まだまだ入ってる!」ってポジティブになっても、現実的な話エンストしちゃうでしょ。それはただの現実逃避。自分の手持ちのカードを客観的に判断したうえでのポジティブが大切だ。

 

そして運を呼び寄せるには、ポジティブに加えてもうひとつ要素が必要だ。それが「ありがとう」。つまりだれかに貢献するってこと。ど真ん中ド直球の自己啓発書みたいなことを言ってるけど、これ、がん患者として実感のこもったアドバイスだから聞いてほしい。

僕の持論に、がん患者には「治療」「収入」「貢献」の3つの柱が必要だ、というのがある。治療に100パーセントの力を注ぐんじゃなくて、それぞれ33パーセントずつエネルギーを分配した状態がちょうどいいよね、という考え方だ。

治すのと稼ぐのはまあわかるとおもうけど「人の役に立つ」も不可欠なの、自分の存在意義が見出だせなくなっちゃうから。だれかによろこんでもらえる実感がないと、自分は社会や家庭のお荷物だってネガティブになっていく。これはがん患者に限った話じゃなくて、お金や名誉があり余ってる人も最後に行き着くのは「貢献したい」って気持ちなんだって。そういえば今、近所の小学校の前で旗振りしてるのはどこかの会社のエラい人だ。

僕はがんを発病してからもずっと撮影の仕事をつづけてて、それは生活のためだけじゃなくて人の役に立ちたいからだ。写真家って言うとキラキラしたアーティスティックな世界を想像されがちなんだけど、じつは広告の物撮りも個人のポートレイトも自己表現じゃなくて役に立つための仕事だったりする。その実感があるし、結果的にいい人に囲まれることができたから平和に楽しく過ごせている。

SNS上でサクッと写真やカメラの質問に答えたりするのも、貢献したいから。自分に渡せるものは気前よく配って、「ありがとう」を集めてる感じだ。たとえ「運をよくしたい」ってエゴな動機で役に立っても相手にとってはただ「ありがたい」なわけだから、ウィンウィンの究極形じゃない?

ちなみに病気になってすぐはアクティブに仕事ができなかったから、まず家のトイレ掃除をした。掃除やゴミ捨て、料理なんかも担当した。妻にはよろこんでもらえたし、「ありがとう」もたくさんもらえた。

 

周りの人にたくさん配る人、与える人のことをギバー(giver)と言う。その反対の、もらってばかりの人はテイカー(taker)。損得勘定だけで考えたらテイカーのほうがよさそうに聞こえるかもしれない。

でも、テイカーのもとには人は集まらない。人が集まらないと、運も寄ってこない。自分からどんどん差し出すギバーだからこそ、人も集まるし運も寄ってくる(ただし、テイカーへのギブしすぎには注意しよう。テイカーは自分のことしか大事にしないから、運を返してくれないんだよね)。

幸せになりたかったら、運を味方につける。運を味方につけたかったら、人を味方につける。そして人を味方につけるには、ポジティブでいる。そしてギバーになる。

今回の話をまとめるとこんな感じ。運とかポジティブとかありがとうとか自己啓発ワードの詰め合わせパックみたいになったけど、これは人生の真理だからおじさんからのプレゼントだと思って受けとってください。「前向きに生きたほうがいい」「人には優しくしたほうがいい」ってスーパーベタでひねりのない教えなんだけど、年齢を重ねると骨身に沁みてくる。若いうちから意識できたら人生かなりいい感じに進むとおもいます。

僕がこういう話を書いてるのも、みんなの役に立って貢献したいからなんだよね。