いまこの文章を読んでる人は、多少なりとも「このおじさんから学べることがあるのかも」とおもってくれているのだろうか。だとしたら、かなりエラい。
僕が若いとき、そんなふうに素直かつ自発的にアドバイスを求める心があったかどうかだいぶあやしいもん。この年になって実感するけど、人から学ぼうとする姿勢ってものすごく大切だ。
みんなはこれまで親や親戚、学校や塾の先生とか、比較的限られたコミュニティの大人と接してきたとおもう。でもこれからは、アルバイトなり課外活動なり仕事なり推し活なり、もっとたくさんの人と出会うことになる。
つまり「人に学ぶ」チャンスが劇的に増えるわけで、それは楽しいことなんだけど、不適切な人にアドバイスされる可能性も高くなっちゃうんだよね。
そういうわけで今回は、人に学ぶうえで大切なリテラシー、「だれにどうアドバイスをもらうべきか」について話してみようとおもいます。
大前提として、大人になると「正解のない問題」を解く機会がどんどん増えていく。たとえば2つの会社から内定をもらったとして、どちらに行くかは「正解のない問題」だ。
超絶大手でホワイトなA社なら、確実に貯金が増やせるけど最初の数年はたいした仕事は任されない。中堅のB社は、どこでも働けるスキルが早めに身につくけど、給与も福利厚生もイマイチ。さあ、どっちを選びましょう。——みたいに、ほとんどの選択には絶対的な正解はないから自分なりに納得のいく答えを出さなきゃいけないの。
このとき、頭をどうひねっても答えを出せなかったらだれかにアドバイスを求めるよね。だれに相談すればいいヒントを得られるとおもう?
まず、断言するけど親はまったくアテにならないよ。僕も息子には、「お父さんの言うことは聞かなくていいよ」と伝えている。だって親と自分って20〜40歳くらい離れてるでしょ、生きてる時代がもうぜんぜんちがう。
たとえば僕らの親世代はだいたい60〜80歳くらい。幅はあるし当然個人差も大きいんだけど、「一社で勤め上げるべし」とか「男は甲斐性、女は愛嬌」的なことを言う人たちもまだ元気に生息してたりする。「AIが仕事を奪う」「日本が『安い国』になる」って言葉へのリアリティも僕らとまったくちがう。
もちろん「健康がいちばん」みたいな普遍的な教えもあるとは思うけど、ちがう時代を生きてる人に人生相談するとピントがずれがちなのは、仕方がないよね。苦じゃなければ親孝行だと思ってにこにこ聞いて、馬の耳に東の風を吹かせよう。
そこで頼りになるのが、「お兄さんお姉さん」だ。5歳とか10歳とか上の、自分より経験はあるけど同時代を生きてる人。
具体的には、23歳で入社したときの30歳前後がちょうどいいとおもう。経験談はフレッシュで記憶補正もかかってないし、社会に対する課題感も同じ。でもちょっとだけ人生経験は豊富。そんな先輩にロックオンして話を聞いてもらおう。
ただし、ちょうどいい年齢ならだれでもいいわけじゃない。その中から「三流」を除かなきゃいけない。若いうちは相手が何流なのか見極めるのはむずかしいかもしれないけど、ひとつの指針として「エラそうな人」はさらさらふるいにかけるといい。圧をかけてきたり、声を荒げたり、相手によって態度を変えたりする人にはシャッターを下ろす。
だって、年下にしか強く出られないのはシンプルにダサいでしょ。ダサい人はイケてる情報を持っている可能性も低いから、アドバイスを求める必要がないんだよね。むしろ自己満のアドバイスしてこようとするタイプだから、やっぱり馬の耳に東の風を吹かせよう。
仕事に関しては、多少年齢が離れていてもその道で圧倒的な成果を残していたり、成功したりしてる人にアドバイスをもらうといい。挑戦したけどダメだった人の話って、自分が成功するためにはあまり役には立たないんだよね。
ロケットを飛ばしたことがない人にロケットの飛ばし方を聞いても意味がないし、写真家になれなかった人に写真家になる方法を聞いても時間がもったいない。
できるかぎり、自分があこがれる結果を出している人の話を聞こう。
それとアドバイスをもらうときには、生存者バイアスに気をつけたほうがいい。「自分がうまくいったからこれが正解ルート」と思い込んで、それを他人にもすすめてくる人は必ずいる。
たとえば「独立するべきかどうか」を相談したら、独立して成功した人は「絶対に独立しなよ、収入も上がるし自由を手に入れられるし最高だよ!」って言うよね。中卒で活躍してる社長は「学歴なんていらないよ」って言いがちだし。
でも、たまたまその人がうまくいっただけで、死屍累々の上にラッキーで立ってるだけってことはたくさんある。むしろその可能性のほうが高い。
こういう「例外」をうっかり盲信しないためにも、サンプル数を増やすといい。ひとりやふたりの意見で判断しない。先輩や成功者たちの意見をできるかぎりたくさん集めて、そこから共通項を見つけるの。
直接話を聞けなくても、本を読んだりインタビュー記事を読んだり、「聞く」手段はいろいろある。「だいたいみんなこういうことを言ってるな」「ここが大事なポイントなんだな」という核みたいなものがつかめてくるまで、たくさんの人の話を聞こう。
僕はまったくオカルトもスピリチュアルも信じてないんだけど、人生の岐路で占いに頼る人も時々いるじゃない? これもやっぱり、20人とか30人とかに見てもらうべきだとおもうんだよね。タロットでも四柱推命でもオーラリーディングでも、「だいたいこういうことを言われるな」が見えてくるはずだから。半分冗談だけど。
とにかく、「ひとつに依存しない」は意思決定するときの大切な姿勢だということは忘れないでほしい。
ということで、「先輩や成功者の話をたくさん集めよう」っていうのが今回の結論。
もちろん、僕の話もまるっと鵜呑みするのはだいぶ危ない。「いいアドバイスのもらい方」を、最低でもあと10人くらいの大人に聞いてから自分の考えをまとめてください。