みんな”普通

第18回 無駄遣いと「稼ぐ・募る・借りる」のすすめ

お金を増やす? 貯める? 我慢する前に使ってみないとお金のことは分からない!?

今年もあと1ヶ月を切った。1年を振り返るのはやや早いかもしれないけど、2024年といえば紙幣のデザインが一新されて1万円札、5千円札、千円札の三種類が新しい顔になった年だったよね。とはいえキャッシュレスで生きているぼくは実感もレスで、いまだに新鮮に「おっ、渋沢栄一だ」となるんだけどみんなはどうだろう? 

きみたちは「子どもとおとなの真ん中、おとな寄り」の場所にいる。おとなになるってことはだいたいの場合「自立する」ってことで、自立するためにはお金とどう付き合うかがすごく大切なポイントになってくる。

そこで今日は、フリーランスとしてベテランの域に入ってきたぼくなりの「お金論」を伝えたいと思う。たくましく生きていくための、お金との付き合い方だ。

 

 

まずは、定番の貯金の話から。ぼくたち30〜40代の世代が子どもの頃までは「貯金=正しい」って認識が圧倒的で、銀行に貯めていれば安心ですよ、とりあえず目標の貯金額を決めましょうって考えが当たり前だった。

でも時代は変化していて、もはやご両親や先生から「貯金しなきゃダメ」なんて言われている人はほとんどいないんじゃないかな。いずれにしても、貯金にはげむとソンをする可能性が高い、ということは頭に入れておくといいよ。

昭和の時代は金利が高かったから、預けるとお金が殖えた。シンプルにトクだったんだけど、いまの金利ではびっくりするほど旨味がない。100万円を1年間、利率0.1%の銀行に預けても手数料を抜けば受け取れる利息はだいたい80円程度。うまい棒5本だ。

まあ、たった80円とはいえ物価が変わらない時代ならソンにもならないんだけど、いまは物価がぐんぐん上がっている。3年前に1000円で買えてたのに1300円くらい出さないと買えなくなってるのもザラで、80円なんて一瞬で飲み込まれてしまう。

つまり、お金の価値が相対的に落ちている時代、低金利の貯金をすると「預けていた結果、買えていたはずのものが買えなくなる」事態が起こるわけだ。

たとえば、お給料から月2万円貯金したとして、年間24万円。それを10年続けたら、240万円の貯金ができる。ちょっとした新車が買える金額だ。でも、その間に物価が上がっていたら、ほしかった車が350万円になってた、みたいな事態になっちゃうの。一生懸命働いて節約して貯めたのに切ないよね。

だから、ムダな貯金はしないほうがいい。それよりも大事なのは、どう上手に使うかだ。上手に使うっていうと将来値段が上がるモノに投資する、みたいなイメージを持つかもしれないけどちがう。

失敗することだ。思いきり無駄遣いしよう。

 

なぜかというと、はやめの経験に一番価値があるからだ。よく言われる話だけど、小学校1年生の1万円と大人になってからの1万円では、得られる経験の大きさがまったくちがう。大人の1万円なんてちょっといいレストランに行ったり美容室で髪を染めたりしたらすぐに消えちゃうけど、子どもにとっては夢ふくらむ大金になる。

いい使い方ができたらハッピーだし、「うまい棒は500本もいらなかったな……」と後悔するのもいい経験。「同じものをたくさん買うと飽きる」とか、無駄遣いから学べることはたくさんある。

みんなはもううまい棒に心動かされたりしないかもだけど、とにかく「いま」ほしいものややりたいことにお金を突っ込んでみよう。無駄遣いをすれば、逆にいいお金の使い方もわかるようになる。ここを知らないままだとおとなになっても「貯める」ほうに軸足を置きがちになるんだよね、「使わないお金を貯めるために働く」なんてほぼ囚人だもん。

若いうちはじゃんじゃん友だちと遊びに行って、じゃんじゃんいろんなものを食べて、じゃんじゃんいろんな経験をするのが「人生のコスパ」がいい。きみたちはいま、ぼくらおとなよりお金を持っていない(はずだ)。それは、無駄遣いできる最大金額が低いってことで、むしろラッキーなんだよね。大人になってから初めてじゃんじゃんすると、とんでもない失敗額になっちゃうよ。いまのうちに、胸を張って無駄遣いをしよう。

 

さて、無駄遣いにも必要な原資を得る方法は3つある。

1. 稼ぐ

2. 募る

3. 借りる

まず、「稼ぐ」。社会に出る前に、トライアルで「商売」をしてみるのがオススメだ。たとえば道に落ちてる銀杏を拾ってきれいに洗って、食べられる状態にして袋詰めしてフリマアプリかなんかで売る。上手に商売をしてる人をパクりつつ儲けを出してみる。銀杏じゃなくても、自分が「価値があって売れるとおもうもの」を見つけてトライする。

で、コンスタントに稼げるようになったらどうすれば効率よく稼げるか頭を使っていくの。「付加価値をつけて高値で売る」かもしれない。「友だちに銀杏売りのノウハウを教えて実働してもらって、自分は売上の一部をもらう」かもしれない。こういう商売のアイデアや感覚は普遍的なものだし、ふつうのアルバイトでは身につけづらいものだから、若いうちにチャレンジしておこう。

そして「募る」。お金って、稼がなくてもぶっちゃけ集められればいいんだよね。だから大きな声じゃ言えないけど、まだかじれるスネがあるなら全力でかじらせてもらおう。おとなのお金で無駄遣いできたら最高でしょ。

あとはクラウドファンディングに挑戦して出資を募るのもいいし、クラウドじゃないファンディングを親戚にお願いするでもいい。「私はこんなことがしたい若者です、お金を出してくれませんか」って声をかけて「こいつにお金を託してみようかな」と思わせれば成功だ。

これ、ラクしてるとかズルだっておもうかもしれないけど、「うちはこんな魅力的な会社ですから株を買いませんか?」と声をかける株式会社と同じ構造だから、遠慮する必要はないよ。ただ会社の株とちがうのは、お金をくれたおとなにリターンを返さなくていいってところ。

若いときは大人からお金をもらって、自分がおとなになったら若者にあげる側になる。もらった人にお返しする「恩返し」じゃなくて、次の世代に渡していく「恩送り」が理想的だ。

 

じゃあ、お金を稼げないし集められもしないときはどうすればいいか。借りよう。借金って聞くと拒否反応がある人もいるかもしれないけど、一律でダメってわけじゃない。

借金について考えるべきポイントはふたつあって、「利息」と「用途」だ。このふたつに問題がなければ、お金を借りるのも悪い選択じゃない。実際、世の中の会社は借金したお金で商品やサービスを生み出して、利益を出してるしね。

たとえば長年の夢だった自分のお店を開くために、利息2%で1000万円お金を借りる。事業計画がしっかりしてるなら、いいチャレンジだ。

大学に行くために利息0.1%の奨学金を借りる。低金利で未来に投資するわけだから、これもいい選択だ。

じゃあ、パチンコしたいから金利15%でお金を借りる、これは? バカヤロウだよね。ホストクラブに行きたいから消費者金融から金利20%で借りる、これもバカヤロウだ。目的が投資じゃなくて浪費だし、どう考えても金利がおかしいでしょ。

こんなふうに、借金は「利息×用途」次第。お金が足りない、どうする?ってときはこの公式を思い出して、未来を見てるか、くだらない使い方じゃないか、自分の胸にじっくり聞いてみてほしい。

 

ここまでたくましく生きるためのお金の持論を語ってきたわけだけど、まあ、お金ってむずかしいよね。お金がないと不便だし不安だけど、お金があるから幸せってわけでもないし。

だからこそ、お金を「使って」どう幸せになるかを若いうちから考えて、自分の満足度とか安心との折り合いをつけていく経験を重ねていくしかない。くれぐれも貯めこんで、囚人ロードに突っ込まないようにね。