ちくま新書

世界は意味と価値のモザイク

日本のドラッグストアが中国人観光客に人気のわけは? インドネシアでポカリスエットが大人気に? 台湾の吉野家にカウンターがない理由は? 日本企業のアジア進出の成功と失敗の豊富な実例から、アジア市場の論理が見えてくる! 9月刊『消費大陸アジア』の序章を公開します。

本書の構成
 
最後に本書の話の流れ(構成)を述べておく。まず第1章では、日本の商品や店舗がアジア市場で思わぬ意味づけや価値づけをされたケースを紹介し、本書のキーワードである「意味づけ」「価値づけ」の問題を捉えることの重要性と面白さを示したい。次の第2章では、意味や価値の違いを生み出す社会のしくみに光をあて、それぞれの市場に備わる「フィルター構造」の存在を提示したい。さらに第3章では、意味や価値を生み出す市場要因をさらに幅広く捉え、各市場に存在する脈絡に注目して「市場のコンテキスト」という概念を提示する。ここまでは市場の側に着目した検討であるが、第4章では意味づけや価値づけを行う主体の側に光を当てる。すなわち、アジアの中間層(消費者)に注目し、その実像に迫ると共に消費行動上の特徴を明らかにする。そして終章では、市場のコンテキストの理解を妨げている「所得要因の偏重」と「文化要因の濫用」という二つの課題をどう克服すればよいのかを検討する。それをふまえて、意味づけを生み出す根源ともいえる「地域暗黙知」の存在に注目し、我々が検討すべき真の課題を示したい。

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