PR誌「ちくま」特別寄稿エッセイ

私と「少年」書籍、そして24年組

“トーマ”の末裔たち・3

PR誌「ちくま」7月号より嵯峨景子さんのエッセイを掲載します

「“トーマ”の末裔たち」を書き始めて以降、少年研究を形にしたいという想いが少しずつ膨らんでいる。もともと蒐集していた本やマンガに加えてここ数年意識的に購入した関連書籍や雑誌を部屋の片隅に積み上げ、どのような方向性で進めていこうかと思案する日々が続いている。
 マンガとは別に24年組の作家たちが発表している読み物が好きで、十代の頃から集めていた。竹宮惠子の『鏡の国の少年たち』はイラストとエッセイで綴られた少年考で、私にとっては文学や映画、少年合唱団などを知る「少年カタログ」としての役割も果たしていた。白泉社のチェリッシュブックは箱入りの小品で、萩尾望都『少年よ』や竹宮惠子『時の少年』など、気が付けば書名に少年と入ったものばかりが手元にある。
 竹宮惠子『ウィーン幻想』はウィーン少年合唱団をモチーフにしたマンガのほか、ウィーン訪問記や少年エッセイなどもおさめられている。収録作品の一つ「アンドレア」は竹宮のブレーンだった増山法恵をモデルにしたと思われる作品で、増山原作の『変奏曲』を愛読していた私のお気に入りだった。『ウィーン幻想』には二〇〇八年十月二十日の日付とともに、竹宮惠子と増山法恵のサインが記されている。『ヴォイス・オブ・エンジェルズ』DVD発売記念のイベントとしてアップリンクで二人のトークショーが開催されると知り、この組み合わせなら万難を排して出かけなければと鞄に『ウィーン幻想』を忍ばせて参加し、終了後にサインをいただいた。
 このイベントで石田美紀『密やかな教育 〈やおい・ボーイズラブ〉前史』という本が発売されることを知り、翌月書店へ買い求めに行ったことも今では懐かしい。収録されている竹宮惠子と増山法恵のインタヴューを読み、こんな形で24年組の当事者語りをもっと聞きたい、記録として残してほしいと渇望感に襲われたことを覚えている。そして時は流れ二〇一六年、竹宮惠子の『少年の名はジルベール』が刊行された。竹宮による萩尾や増山等と暮らした大泉サロンにおける青春の日々と、少女マンガに革命を起こすための苦闘を綴った一冊は長らく待ち望んでいたものだった。
 私は少年好きではあるが現実の美少年に対する執着は薄く、マンガや小説を中心に虚構の少年像を追い求めている。それゆえヨーロッパ映画の美少年をまとめた石原郁子編『美・少・年』(芳賀書店)を読み物としては楽しんだが、映画や小説以外にもロックやマンガ、アイドルやアニメ、そして同人誌まで広く言及している『ラヴェンダーエンジェル 永遠の美少年』(白夜書房)の方が関心と重なる。少年を「創作」するということが自分の興味のキーワードなのだろうかと考えつつ、まとめて一五〇冊ほど入手した雑誌『JUNE』と『小説JUNE』の頁をめくっている。
 近年は24年組の作家のみならず、さまざまなマンガ家の展覧会が開催され、その作品世界や原画に触れる機会が増えている。萩尾望都『ポーの一族』の新作が四十年ぶりに発表されて大きな話題を集めたが、先日は二〇一八年に宝塚歌劇団花組で『ポーの一族』が上演されることが告知され、ファンを驚かせた。そんな24年組の今を追いかけつつ、いつか自分の「少年」を研究としてまとめられるように少しずつ動いていきたい。そんなささやかな宣言とともに「”トーマ”の末裔たち」の幕を閉じる。

 

PR誌「ちくま」7月号

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