ちくまプリマー新書

言葉の武器を味方につけよう!

『5日で学べて一生使える! プレゼンの教科書』はじめに

プレゼンはこれからの社会で誰もが身につけるべき、欠かせないスキル。自分の言葉を届けたい。人の心を揺さぶりたい。言葉の力で世の中を変えたい。そんな思いを抱いたことはありませんか? テレビや講演会など、数々のプレゼンで聴衆を魅了してきたトークの達人が、その技を徹底伝授した指南本より、「はじめに」を公開します。

はじめに――プレゼンで成績が決まる!?

 みなさんはプレゼンというと、どのようなものを思い浮かべるでしょうか? ワクワクするようなスティーブ・ジョブズのビジネスプレゼン、アイデア溢あふれるTEDのスピーチ、マイケル・サンデル教授のハーバード白熱教室、あるいは世界中から注目を浴びるアメリカ大統領の就任演説……。
 どれも目的や内容はまったく異なりますが、熱く、魂を込めて語る姿に心を揺さぶられますよね。あんなふうに人の心をつかみ、感動を与え、そして人の生き方に影響を与えるようなプレゼンをしてみたい。そんなふうに胸の奥で感じたことがある人は、少なくないのではないでしょうか。
 とはいえ、そうしたすごい演説を思い浮かべると、自分とは縁遠いと思う人もいるかもしれません。でも、じつはこれから皆さんが生きていくうえで、プレゼンは避けては通れないものなのです。
 私も昔は自分がプレゼンをするなんて思ってもみませんでしたが、かっこいいプレゼンに憧れて、先ほどのマイケル・サンデル教授をお手本に研究したり、失敗と成功をくりかえしたりなどして、必死に学んできました。ぜひそのノウハウを皆さんにお伝えしていきます。
 今書店に行くと、たくさんのプレゼンにかんする本を目にすることと思います。プレゼンとはもちろんプレゼンテーションの略なのですが、ビジネスの世界ではプレゼンと呼んでいます。そして毎日のようにビジネスパーソンはこのプレゼンを行っているのです。
 なぜなら、仕事というのは自分の企画を社内外の人たちに理解してもらってはじめて、前に進めていけるものだからです。したがって、何かやりたいのであれば、まずは自分の所属する部署のなかでプレゼンをして理解を得、最終的には経営側にゴーサインをもらう必要があるわけです。
 そして外部にビジネスパートナーやお客さんがいれば、次はそういった人たちにも企画を理解してもらわなければなりません。そこでまたプレゼンをすることになるわけです。当然のことながら、社内の人に向けてするプレゼンと、外部の人に向けてするプレゼンは変わってきます。したがって、毎回頭をひねってプレゼンを変えていく必要があるのです。海外の人に向けて行うプレゼンなら、言葉や文化の違いを踏まえて、さらに頭をひねる必要があるでしょう。
 このように、仕事では毎日のようにプレゼンがくりかえされます。したがって、大学のうちにプレゼンの基本をマスターしておくと、その後の人生において大きな強みになるのです。実際、いまの大学では、プレゼンを行う機会がどんどん増えています。大学は職業訓練学校ではありませんが、かといってまったく社会とは関係ないことばかりする場所でもないのです。大学を出た後のことを考えて、社会で活躍できる人材を育てることも大学の使命だからです。
 社会でプレゼンが重視されているなら、大学でもそれを重視することになります。実際、私が大学生の頃には考えられなかったのですが、今は授業のなかにプレゼンが組み込まれています。私の勤める大学でも、まずアカデミックスキルのひとつとして、入学したての1年生を対象に、レポートの書き方と合わせてプレゼンの仕方を教えます。さらに、効果的なプレゼンをするための授業もあります。大学院でも学会発表などを意識して、やはりプレゼンを教えています。私の場合、大学1年生向けの「基礎セミナー」と、大学院生向けの「プレゼンテーション特論」のなかでプレゼンを教えています。
 このように、今やプレゼンは大学生の基本的な作法として常識になりつつあるのです。プレゼンがうまくできないと、いい成績がもらえないといっても過言ではありません。これは脅しでも大げさな話でもなんでもなくて、事実です。というのも、授業によっては、レポートや試験の代わりに、プレゼンで評価するというものも増えてきているからです。仕事の世界では、プレゼンのみで企画の採否が決まることだってあるのですから、決して不合理なやり方とはいえないでしょう。
 そうなるともう大学生向けにプレゼンの仕方を指南する本が求められるわけですが、残念なことに、まだあまり刊行されていません。おそらくこれから増えていくとは思いますが。今あるのは、ビジネスやその他一般的なシーンにおけるプレゼンを指南する本ばかりです。
 でも、大学生がやるプレゼンは、またすこし違う部分もあります。そこで、本書では、どんなシーンでも使える話に加えて、大学生特有の状況も考慮に入れながら、大学生が使えるプレゼンマニュアルをご紹介したいと思っています。全体は5つの章で構成されていますので、1日1章ずつ読んでもらえば、最短5日間でプレゼンの基礎を学ぶことができるはずです。さあ、それでは始めましょう!

2019年4月26日更新

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小川仁志(おがわ ひとし)

小川仁志

小川仁志(おがわ・ひとし)。1970年、京都府生まれ。哲学者・山口大学国際総合科学部教授。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。商社マン(伊藤忠商事)、公務員、フリーターを経た異色の経歴。徳山工業高等専門学校准教授、米プリンストン大学客員研究員等を経て現職。大学で新しいグローバル教育を牽引する傍ら、商店街で「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。また、テレビをはじめ各種メディアにて哲学の普及にも努めている。Eテレ「世界の哲学者に人生相談」には指南役として出演。専門は公共哲学。著書も多く、ベストセラーとなった『7日間で突然頭がよくなる本』(PHP研究所)や、本書の姉妹篇『5日で学べて一生使える! レポート・論文の教科書』(ちくまプリマー新書)、近著『AIに勝てるのは哲学だけだ』(祥伝社新書)をはじめ約100冊を出版している。

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