ちくまプリマー新書

この本を読んでから渡韓したかった。

稲川右樹『高校生からの韓国語入門』書評

稲川右樹『高校生からの韓国語入門』(ちくまプリマ―新書)について、人気韓国ブロガーのこりあゆさんによる紹介エッセイを公開いたします。 初心者はもちろん、韓国語をある程度話せる人も面白いという本書の魅力とは? ぜひお読みください。(PR誌「ちくま」2021年3月号からの転載)

 私、こりあゆは韓国語を勉強し始めてから12年が経ち、そして韓国に住み始めてからは9年目の在韓日本人です。まだまだではありますが、ある程度韓国語が話せる私が感じた本書の魅力についてお話ししたいと思います。

 まず、本書は韓国語の勉強を楽しく始められる入門書です。読めば、「韓国語って意外と簡単!」ということがわかり、もっと勉強したいと思わせてくれます。

 どうして簡単なのか。たとえば韓国語の文字であるハングルは、私達が普段使っている漢字を使用した中国語(厳密には日本で普段使っているのとは字体が違っていますが)、アルファベットを使用した英語とは違い、見たことがないような形であるため(文字というより記号に見えるという人もいます)、一見他の言語に比べて難しそうに思えます。しかし、少し頑張ってその仕組みさえ覚えてしまえば、文字のように見えてきて、ハングルはすぐに読めるようになります。

 また文法も、英語とは違って日本語にとても似ているため、韓国語はすごく学びやすいです。もちろん、学べば学ぶほど「え、そこは違うのかい」とツッコミたくなるような微妙な言い回しやニュアンスの違いに悩まされることはあるのですが、他の言語と比べると習得しやすく、日本人がハマりやすいのではないかと思います。

 私は中学生の頃から英語の授業が苦痛で仕方がなかったので、まさか自分がその後いろんな外国語に興味を持つとは思ってもみなかったのですが(笑)、その壁を破ることができて、外国語の楽しさを知ることができたのは韓国語のおかげです。「興味があるけど難しそう……外国語だし……」と韓国語の勉強を始めるのをためらっていらっしゃる方は、まずは本書の最初の方だけでも読んでいただければと思います。

 また本書は、私のようにある程度韓国語を学習して話せるようになった人が、改めてその仕組みや歴史を知ることで、さらに韓国語という言語を深く理解することができる一冊でもあります。そうした新たな発見の中でも驚いたのが、陽母音と陰母音の話。韓国の国旗には青と赤の模様がありますが、本書によると、それは「陰陽五行説」という東洋哲学の思想に由来するものです。この「陰陽五行説」は、世の中に存在するあらゆるものは「陽のパワー」と「陰のパワー」を持つものでできていて、その二つが調和を保つことで世界が成り立っているという考え方ですが、なんとそれが韓国語にも表れているといいます。つまり、韓国語の母音「陽母音」「陰母音」が、これに由来しているというのです!

 韓国語を요体(丁寧な言い方)に変えるときに、動詞の活用を変えなければいけないのですが、かつて独学で韓国語を勉強していた私は、「陽母音」「陰母音」を無理やりに覚え、時に間違えながらも臆せず使って、その活用を身につけました。そんな苦労して覚えた「陽母音」「陰母音」が、国旗、そして国民の考え方と結びついたものだったのか! 韓国語にはこんな隠れた思想があったのか! と、新たな発見に興奮を覚えました。

 このように、本書では随所に韓国語の歴史や民族の話、また知らなかった話がさらっと書かれているので、韓国語に触れて12年経つ私にとっても、とても読み応えがありました。韓国語の文法や単語など基本事項がわかりやすく説明されているのはもちろんですが、「韓国語」そして「韓国」という国についてもさらっと触れつつ深いところまで書かれている、とても濃い一冊なので、韓国語に興味を持つどんな方にも手にとっていただきたいと思います!