ちくまプリマー新書

読むだけで相対性理論がわかる「小説」が登場!

『16歳からの相対性理論――アインシュタインに挑む夏休み』より本文を一部公開

「なぜ光の速さは変わらないのか」「どうして重力は物を落とすのか」「時間は絶対的なものなのか」……小説を楽しみながら相対性理論がわかる一冊『16歳からの相対性理論――アインシュタインに挑む夏休み』(ちくまプリマー新書)の内容を一部公開! ひょんなことから科学の世界に足を踏み入れた高校一年生の数馬と、物理学の研究者であり普段はアメリカに暮らしている数馬の父親・宗士郎が、「光の速さ」の不思議について語り合う場面です。

「自転車が秒速10メートルで、そこから光を前向きに飛ばしたから、光の秒速に10メートル足して……2億9979万2458……じゃなくて68メートルだ」

 数馬の近くまで来た宗士郎は、あのひとなつこい笑みを浮かべた。

「ブー! 残念。不正解」

「え?」

「じゃあ、後ろ向きに飛ばした光の速度は?」

「それは、光の速度から自転車の速度を引いて、秒速2億9979万2448メートル……でしょ?」

「ブー! それも不正解」

「こっちも?」

「正解は、どっちも、2億9979万2458メートルぴったりだよ」

「なんで?」

「なんでって言われても、それが正解なんだから、しょうがないだろ」

「しょうがないって……」

 宗士郎は、砂利道に自転車を停め、ハンドルにライトを戻した。

「自転車が秒速50メートルで走ろうが、100メートルで走ろうが、関係ない。走ってる自転車から前に飛ばした光の速さは、自転車に乗ってるおまえが測っても、道端に立ってるおまえが測っても、秒速2億9979万2458メートルなんだ。それに、後ろに飛ばした光の速さも、自転車に乗って測っても、道端に立って測っても、やっぱり光速ぴったりなんだ」

「石の速さは変わったじゃないか」

「石でも、ボールでも、ロケットでも、前向きに飛ばして、おまえが道端に立って測ったら、自転車の速度を足さなきゃいけないし、後ろ向きに飛ばしたら引かなきゃいけない……厳密に言えば、実は正しいとは言えないんだけど……」

「正しくないの?」

「いや、まあ、普段の生活で使うくらいの速さなら、ほとんど問題ないんだが、でも、ものすごく速く動くものに対しては、同じ考え方では通用しないんだ」

「通用しない?」

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