金持ち父さん

『金持ち父さんの「大金持ちの陰謀」』第二回
第一部 はじめに

 パーソナルファイナンシャル部門で史上最長のロングセラーとなった、『金持ち父さん 貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキは、本書の執筆にあたって革新的な方法を試みた。草稿段階の原稿を章ごとに専用サイトで順次公開し、感想を寄せてほしいと広く呼びかけたのだ。本書はその双方向的なプロセスが実を結んだものであり、そのことを記念してここに冒頭部分を掲載する。

私があなたに約束すること

ニクソン大統領が一九七一年にお金についてのルールを変更してから、お金というテーマは複雑きわまりないものとなった。お金の話題は誠実な人にとっては納得がいかないことが多い。実際、誠実で勤勉な人ほど、新ルールは理解しがたいだろう。

例えば、新ルールは、金持ちが自分でお金を印刷することを認めている。もしあなたが同じことをしたら、通貨偽造の罪で監獄行きとなるだろう。しかし本書では、私はどうやって自分のお金を合法的に印刷するかについて述べようと思う。自分のお金を印刷することは、真の金持ちになるための最大の秘訣のひとつだ。

約束しよう。私は、説明をできるかぎりシンプルにすることに最善をつくす。複雑な経済用語を日常用語で説明するよう最善をつくす。例えば、今回の経済危機が訪れた原因のひとつには、デリバティブという名で知られる金融のツールの存在がある。

ウォーレン・バフェットはかつて、デリバティブのことを「大量破壊兵器」と呼んだ。その表現は正しかったことが証明された。デリバティブは世界最大手の銀行を破滅させつつある。

問題は、デリバティブとは何かをほとんどの人が知らないことだ。簡単に説明するため、私はデリバティブ(金融派生商品)をオレンジとオレンジジュースにたとえる。オレンジジュースはオレンジの派生物だ。それはガソリンが石油の、卵がニワトリの派生物であるのと同じだ。そのくらい単純なものだ。あなたが家を買ったら、住宅ローンはあなたとあなたが購入した住宅からできた派生物というわけだ。

私たちが今この経済危機の渦中にいる理由のひとつに、世界中の銀行家がデリバティブのデリバティブの、そのまたデリバティブを作り始めたことが挙げられる。これらの新しいデリバティブの中には、債務担保証券とか高利回り社債(別名ジャンク債)とかクレジット・デフォルト・スワップといった、何とも奇妙な名前を持つものがある。本書では、これらの用語を平易な言葉で説明するように最善をつくす。覚えておいてほしいのは、一般の人々を混乱させ続けることも、金融業界の目的のひとつだということだ。

多層的なデリバティブは、詐欺すれすれの商品だ。それはまるで、クレジットカードの支払をするためにクレジットカードを使い、自宅の住宅ローンを借り替えて作ったお金でクレジットカードの返済をし、また最初からクレジットカードを使い始めるようなものだ。だからウォーレン・バフェットは、デリバティブを大量破壊兵器と名づけたわけだ。

つまり、多層的なデリバティブが世界の金融システムを破壊しようとしている。それはまるで、クレジットカードと住宅担保ローンが多くの家庭を破壊しつつあるのと同じだ。クレジットカード、お金、債務担保証券、ジャンク債、そして住宅ローン──それらは、それぞれに違う名前がついているだけで、実際にはすべてデリバティブだ。

二〇〇七年、デリバティブで建てられた家が崩れ始めた時、世界で最も裕福な人々は「救済を!」と叫び始めた。救済(緊急援助)という措置は、金持ちが、自分が犯した過ちや詐欺やペテンのつけを納税者に肩代わりさせたいと思った時に利用される。私の研究によれば、救済は大金持ちの陰謀に欠くことのできない重要な要素だ。

私の著書『金持ち父さん 貧乏父さん』がパーソナル・ファイナンスの本として史上最高のベストセラーになった理由のひとつは、経済の専門用語を一貫してわかりやすく説明したからだと私は考えている。本書においても、できる限り同じことをするつもりだ。

ある賢者がかつてこう言った。「単純明快であることこそが天才の証だ」。なるべく話を単純明快にしておくために、私は無用に詳しい話や複雑な説明は避けようと思う。言いたいことをはっきりさせるため、専門的な説明よりも実話を紹介する。もっと詳しいことを知りたい人のためには、さらに深く解説した参考文献を紹介しよう。そのひとつ、フラー氏の『巨人たちの世界的現金強奪』などは読む価値のある名著といえる。

単純明快であることが重要なのは、お金というテーマを複雑でわかりにくいものにしておくことで利益を得ようとする人が数多くいるからだ。混乱している人からお金を奪うのは、いとも簡単なことだ。

ここで再度、皆さんに聞きたい。お金に対する執着心は諸悪の根源か? 私の答えはノーだ。人々にお金のことを隠し無知のままにしておくことのほうが、よほど悪であると私は考えている。人々がお金の仕組みについて無知である時、悪の手は忍び寄ってくる。そしてお金に関する無知こそ、金持ちの陰謀の最も重要な要素だ。

読者の感想
私はウォートン・スクール(ペンシルバニア大学のビジネススクール)で学びましたが、お恥ずかしいことに、富を創り出すことについてこれほど明快な解説を授業中に受けたことはまったくありませんでした。この本(とロバート・キヨサキのすべての本)を、ハイスクール以上のすべての人にお薦めします。─Rromatowski

ロバート、あなたはお金を愛する心が諸悪の根源なのではないと言いますが、あなたと同じ理由で私は、お金への愛が諸悪の根源だと思っています。大衆をお金について無知な状態にしておくという悪事は、お金を愛するよこしまな心の「派生物」にすぎません。─Istarcher

(続きは本書で)

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