安藤桃子×伊藤洋志×pha

「フルサトをつくる」を実践する!
『フルサトをつくる』刊行記念鼎談

ちくま文庫の『フルサトをつくる――帰れば食うに困らない場所を持つ暮らし方』(伊藤洋志×pha著)の刊行を記念して、著者お二人と、映画監督の安藤桃子さんと鼎談していただきました(2018年5月8日)。この文庫の巻末にも鼎談は掲載されているのですが頁数の都合で短くしか載せられませんでした。あまりにも面白かったのでここに全篇(前後篇2回にわけて)公開いたします。高知市で映画館を運営する映画監督・安藤桃子さんのパワー全開です。著者お二人の知恵と体験とのからみが面白いです。

伊藤 この本は、べつに移住をみんなに勧めているわけではなく、「家を借りたり、滞在できる拠点をつくったりすると面白いよ」くらいの本です。実際に、フルサトをつくることを実践しておられる方ということで安藤さんに来ていただきました。

安藤 これは文庫が合っている本ですよね。1回読んで終わりというより、フルサトデビューしたいなと思ってたら、ポケットに入れておいて、「そうだ、こんなことを言っていたな」という感じで時々読んだほうがいい。

伊藤 確かにそうですね。最初は読んでも頭に入らないことも多いと思う。意外と、2回目に読んだら、こんなことが書いてあったという感想は多い。

安藤 私、珍しくこんなにいっぱい付箋を付けました。要所要所で気になる言葉が多々あった。この本は、家族と移住するような自由発想の人たち向けというよりも、家からほとんど出ないけど、「マジ? フルサトつくるって確かにアリかも」という人のスイッチが入りやすい本だと思いました。

●高知に行けば美味い食べ物もあるし死なないと思った

伊藤 高知に行かれたのはいつからですか?

安藤 2014年3月18日に住民票を高知に移しました。その前から行き来していて。この本を読んでまず思ったのが、自分が移住していろいろな経験を経て辿り着いたポイントと、本の着地点は同じだということ。面白かったのが、文中に、「骨を埋ずめる覚悟はなくていい」というエピソードがあるけど、私自身の、アプローチは真逆で、「骨を埋ずめます」と言い切って移住したんです。寺をどこにするか、墓をどこにするか(笑)。というのも、革命を起こしたいと幼少期から漠然と思っていて、それが東京でもロンドンでもニューヨークでもなく、高知に出会った瞬間、直感3秒で「ここだ!」と思った。ここに書いてある、誰か引っ張る人が必要かもしれないというところを、私はたぶんやろうとしていて、骨も埋ずめるし、子供もそこで育てますと。腰を据えなきゃ、何もついてこないと思ったので、ドンと根を張ってしまえと。

 最近、事務所兼で高知の町中に昭和の日本家屋で、畳とかボロいけど、とりあえず家を借りて、勝手にアーティストレジデンスもはじめました。都会では、撮影のためにカメラの三脚を置いただけで通報されたり、映画を作りたいけど協力者がいないという人が多い。高知は映画を作るにしてもすごく良い環境だし、アーティストが長期滞在できる宿があったら、すごく来やすいでしょう。映画館スタッフも一人、東京で声掛けて、とりあえず1年間やってみたら? と呼びました。

伊藤 そういう人がいるかいないかは、大きいですね。僕らも、本人は骨を埋ずめるとは言っていないけれども、先に移住した二人がいるので、それでやり始めたところはある。

安藤 高知なんかは特に気合いが入った人が好きだから。そういう人が立っているとコミュニティはつくりやすい。

伊藤 よく本のイベントで、読者から「フルサトをつくるにはまずどうすればよいのですか」という質問を受けると、そういう人を探したらいいみたいな話をしていました。最近はそういう人たちが場所を運営し始めたりしているから、見つけやすくなってきて、とりあえずそういう場所(ゲストハウスなのかイベント施設なのかわかりませんが)に行けば、主軸になりそうな人が見つかりやすくなってきていると思います。

安藤 ここ数年で、その辺はものすごく変わりましたね。

 高知では食うに困らないというか、死なないとすごく感じてる。3・11のあと、東京で感じたのは、お金がないと物が買えないというシステム上、生きる=お金で。店から物がなくなったら、死ぬという危機を感じるわけですよね。「どうしよう! 食べ物がない!」って。お金がないと食っていけないし、住まいもない。

伊藤 べつに買い占めなくてもよいはずの状況でカップラーメンがなくなったり。人間の行動が変わることにインパクトがありましたね。

安藤 高知に来たら真逆で、お金はなくても食べ物が穫れ放題。しかもかなり美味い(笑)。所得(総県民所得)は最下位のほうだけど、見えない通貨で回っているような感じ。住んでみたら、物々交換が主流で、そこに領収書もない(笑)。

●市内の川で老若男女がシジミ採って帰る

伊藤 アフリカみたいな感じですね。だいぶインフォーマル経済で。友人が四万十川のほうに移住して宿を始めるので床を張りに行って、帰りに高知に寄って一人で飲みに行ったら、よくわからないけど、隣に座った人が焼酎でできたカステラを買ってくれました(笑)。「うちの親戚が作っているから、いまから取ってきてあげる」みたいな。

安藤 そう。本当に食うに困らないから、暮らしやすい、過ごしやすいというよりも、生きやすい場所だというのはすごく感じて、夕方になったら、おばちゃんが割烹着で釣り糸を垂らしているし、時期になったら、街中の川で、ガンジス川のように、老若男女、シジミを採っているし(笑)。

伊藤 市内の川ですか?

安藤 はい。シジミを採って、飲んでから帰るみたいな、全部一体化していて、超最先端じゃないか! と(笑)。

伊藤 高知市って結構都会ですけどあの場所でできるのがすごい。みんな夜まで飲み歩いていて、屋台もあるし、ちょっとアジア感がある。

pha 高知は行ったことがないけど、すごく良さそうですね。

安藤 いつでも来てください。その家で雑魚寝でよければ。身だけ移動してくだされば(笑)。

伊藤 僕の実家は香川県の丸亀でわりとよく行きますけど、丸亀と高知はこんな近所でも文化的に全然違うという感じはあります。高知は基本的に海洋系の雰囲気の人たちだから、とにかくお酒飲んで明るい。香川の人は、それなりに楽しいですけど、地道に節約しているみたいな。

安藤 おとといも四国の話になって、四県は、私も住んでみて、文字通り、四つの国というぐらい、全く混じり合わない。

伊藤 もともと山で切られていて簡単に行き来もできなかったから。

安藤 文化も違う。徳島はある意味、関西人だと思って生きてるし。愛媛は愛媛でのほほんと。ほんとにまた人種が違って、香川は都会的でちゃんとビジネスができるし。高知はその中でも一番ガラパゴス。四国山脈と太平洋で完全に分断されているから(笑)。

伊藤 でも、あまり激しい近代化の波に呑まれていない。誇っているものが多いですよね。実は豊かだけど、指標の問題で、ある視点で見れば、所得が低いみたいな批判にさらされてしまう。

pha 所得を無理して上げなくてもよいということですよね。東京みたいに、走り続けていないと死んでしまうみたいな感じじゃなくて。

安藤 高知の経済同友会の人たちが、そのスタンスで、私も最初の頃はどんな人たちが高知のお金をコントロールしているのかなと思って会議に行きました。企業の社長たちの考え方は、高知は中途半端に水準を上げたら、もっと中途半端になるから、どうせなら最下位になりたいと言っている(笑)。独自の通貨で、独立国として、本当のこころの豊かさを知る、ブータンみたいになりたいと。

伊藤 社長さんがそう言っているのは、すごいですね。

●お金に縛られないとパワーアップする

pha 東京は家賃とかがすごくかかりますからね、ホームレスになる恐怖と戦っている人も多い気がする。それに縛られずに生きられたら、かなり楽になる。

伊藤 東京はあくまで仮住まいと思って住むのが妥当な町だけど、それはそれで意味があるという捉え方ができるとよいな、と思いますね。仮住まいの自覚の上でやれることをやる場所。

安藤 人生において燃焼するエネルギーは、人それぞれだと思いますけど、それが、東京では小さいお猪口を回してがんばっていたのが、高知に行ったら回すのがもっとでかいものになる。転がす力は必要だけど一回転でかなり進む。自分に搭載されているエンジンがフルに使えるようになったと感じています。高知では貯金がゼロになっても豊かに暮らせることを知ってしまった以上もうお金に恐怖を感じないので、「え~い、全部使っちまえ! 映画館やっちゃおうぜ! なくたって生きられる」と(笑)。東京でそれをやったら、数ヶ月で倒産ですよ。「家賃払えない。どうするの?」とか、お金を中心にみんなの心がしぼんじゃうけど、高知では常に俯瞰して物事が見られるし、「とりあえず、走りながら考える」戦法が使える。

 私は断食が好きで、中学生ぐらいから時々やるんです。ふだんは、朝起きたら「何食べよう」、朝ごはんを食べたら「給食は何だろう」「お菓子食べようかな」「ジュース飲もうかな」と、食欲って思考のかなりの部分を埋めている。でも、食べなければ、今まで頭の中はそのことでいっぱいだったと気づく。もしお金主体に生きていたら、「きょう、コンビニでいくらのカップラーメンを食べておけば、この分のお金をこっちに回せる」みたいな計算式が無意識のうちに頭にあると思うんですよ。生活を保つこととか家賃のこととか。それを一切合切横に置いておけると、どんな人にもあるもともとの能力に気づける。こころの余裕はみんなパワーアップさせてスーパーサイヤ人化してくれる。

伊藤 実はあまり考えなくてもよいことにエネルギーを奪われていると。

安藤 めっちゃ奪われていると思う。「事情」「都合」「システム」ですよね。経済に基づいたシステムがあって、そのシステムの上で生きることありきで都会は暮らしているから。

pha 都会でお金のことを考えてうまく生きていけない人にこの本を読んでもらって、地方に行ったりしてもらうとよいなという感じですね。

安藤 ほんのちょっと別の場所に行っただけで、自分の本来の力が見つかるというか。私、この本でとても好きだったのが、暇だからジャンキー化するという話。でも、その暇と、自分の本来やれることを活かせる時間を見つけるというのは全然違うじゃないですか。暇って、生きるエネルギーとか、何をしたら楽しいか、ということとべつだから。

伊藤 そうですね。忙しいけど暇という罠があります。

●いきなり趣味を与えられても

安藤 ある方が、定年退職した人に向けて作務衣を提供し、ロクロを回せる環境をつくって、定年後の趣味を提供することをしたいと言った瞬間に、うちの親父が「おめえ、それは全然ちげえよ!」みたいなことを言って、最後にその方も「そうか」みたいになったんです。みんな、それまでバリバリやってきた人が定年で仕事を辞めて、いきなり作務衣を着せられてロクロを回せと言われてのびのびとした生活を与えられても、全然楽しくもないし、逆にどんどん人生が暗くなっていくんじゃないかと。それよりも、その人たちがやっていたことを求めている市町村で、いままでの人生を活かせること、最後まで生涯現役でいられるような環境を作るべきだと。いきなり趣味をやれと言われても、ず~っと仕事をしてきた人、特に団塊の世代は、「いまさら趣味なんか要らねえ」となる。

伊藤 そうですね、定年になってからだと間に合わないですね。

pha 年寄りにロクロを回させておけばよいというのも、乱暴な話ですね。

●はじめは会話をして仕事を頼まれる機会をつくる

安藤 逆に、私は定年になった人と若者を繋ぎたい。たとえば私は経理とか全然できないけど、経理が得意な人にご意見番になってもらうとか。逆に、若者は草刈り一つでも、若さがどれだけの宝かみたいな。若いだけでお金を貰える地域もありますよね。

伊藤 ありますね。特に草刈りが移住の序盤の生業だったという人は多いですね。とりあえず、最初に来て仕事がないから、草刈りやりますと言っておけば何とかなる。そこから、やりたい農業なりにシフトしていくというパターンが結構多い。

安藤 田舎に行ったら仕事はいっぱい、死ぬほどある。

伊藤 人は特にいるだけで有り難い。

pha 他には畑や田んぼの手伝いとか。

伊藤 全然関係ないけれども、このまえ、坂本龍一さんの先祖の番組(『ファミリーヒストリー』NHK)をやっていて、彼の先祖は腰に鈴をつけて村を走り回って、鈴の音が聞こえたら呼ばれて、何でも頼まれるという、村の何でも屋だったらしいですけど、実際、頼まれれば何でも仕事になるので、話して聞いていればいろいろ出てくると思います。あらかじめこれをやったらよいというメニューも想定できるけれども、何かしらの会話をする機会をつくって、「来たばかりでいまは仕事をしていないから、何でも頼んでもらえれば」というやり取りのほうが重要だと思います。

pha 人手が本当に足りていないですからね。体が動くというだけでいろいろ頼まれる。店番とか。

●素直に人に頼むことが本当は都会でも大切

伊藤 僕も、アーティストレジデンス兼ゲストハウスをつくろうと、遠隔で通いながらやっていましたが、市役所に書類を出すことなどは時間がなくてできなくなってきたから、そこにいる友達に頼んだりしています。「市役所に行って調べてくるだけだから」と言って。できないことを素直に頼んでいくという文化が本当は都会で必要だと思います。

pha 都会は、「みんな忙しいしな」と思ってしまう。

伊藤 そうそう、頼んだら悪いんじゃないかという遠慮によって、人々が遠ざかっていて、じゃあ、ちゃんとした業者に頼むと当然割高になる。

pha お金が解決できるのが都会の良いところでもあり、悪いところでもある。

伊藤 「言ってくれたら、やるよ」みたいな話が意外に転がっているから、そういうのを、本当は田舎に限らず東京でも問い直していく必要があると思う。高知などはわかりやすい場所だと思うんですよ。地方に行くと、現実に大工さんもいなくて頼めない場所もあって、「あの人は大工仕事ができそうだから、頼んでみるか」みたいにやらざるを得なくなる。システムでない、個人とどうやって協力していくかというのを、もう少し現実に近い形に戻す場所じゃないかなと。

pha やっぱり、それは田舎がやりやすいよね。東京は、人が多過ぎるからやりにくいような気がする。友達に頼むと完成度が低かったりして、プロの6、7割かもしれないけれども、でもそれで問題ない。それで回していけたらいいというのがあるんですね。僕らが床張りやっていたのもそんな感じだし。プロには負けるけど、べつにできるじゃんと。何でもお金がないとできないというのから外れていきたい。

安藤 考えるきっかけにもなりますよね。一個のことを業者で終わらせると、「壊れたから直しました」で終わりだけど、「直せる人はいないものか。じゃあ、こういうふうにしたらどうだろう」と、生活の中で点と線を繋いで考えることがちゃんとできる。

●点と線を繋ぐ

安藤 いまって、全部が点な気がして、(ネットで)欲しい→ポチッ(とクリックして)→届く。その便利さは絶対必要だけど全部がそれだと、結局繋げていく能力が低くなっていく。人生で、どうしても点と線の人とのコミュニケーションが必要になったときに、そのやり方が生活にないから、点でしかコミュニケーションが取れないみたいなすごく苦しいことも、若い子と仕事をしていると感じる。「なぜ、さっきのこれとこれが繋がっていないんだろう?」と。

 この本にも書いてあった、立つときにちゃんと食器を全部持って台所まで行くみたいな体の流れが、田舎で生活すると普通にできるようになる。そのあとのことと自然と繋がっているから、そういう処理能力ができるけれども、いまはそれをどうしてもなくしがちだなと思います。

pha 何でもポチッとやったら解決するみたいな、クリエイティビティが育たないみたいな。

安藤 そうそう。効率、効率と言っているのに、人がどんどん効率的でなくなっている(笑)。

伊藤 ある局面での効率性を求めていくと、そのルール自体を疑って、壊したほうが違う効果を出せるところに行かないというのはありますよね。ルールがダメだと行き詰まっていく。煮詰まりの原因は、たぶんそういうところにあるんですよね。むしろ、そこを変えることができれば煮詰まらなくなっていく。

●自分にあった県がある

安藤 あと、結構思ったのが、じゃあ、どこに行こうかというときに、日本はかなり特殊な国だと思うんです。たとえばフランス人とイギリス人は全然違いますけど、それくらい、日本の北から南までひとつの国の中で違う。一応日本語ベースだけど、方言と文化も違うし、県民性も四国を見たらよくわかるけど全然違う。飲める人だったら、居酒屋へ行けば何となくわかるじゃないですか。高知だったら、絶対に一人でしっぽり飲むことは不可能です。

伊藤 不可能だと思いました。絶対「どこから来た」とか話しかけられて、「床を張りに来た」と言うと話が長くなるから「出張で来ました」とか言ったら質問は続き、余計ややこしくなって、結局、お菓子を貰って。やはり、県との相性というのは人それぞれにありますよね。それを考えたほうがよいというのが一つの発見かもしれない。「どこがいまイケてますか」と聞かれるけど、「自分と相性のよいところは、どこだろう」と考えたほうが、本当は正確ですね。

安藤 そういう本をつくってください。例えば、高知だったら、挙手! 私担当しますよ。「できれば一人で静かに暮らしたい」、「本音と建前を使い分けたい」と言ったら、高知は絶対NGで、高知で必ず言われるのは、「嘘はバレる」「とりあえずやってみよう」「走りながら考える」(笑)。

pha 力強いな~(笑)。

伊藤 でも、そういうことは意外に意識されてないかもしれないですね。日本は謎のふんわりした一体感に包まれようとしているけれども、実はだいぶ違うぞと。それは知る必要がありますね。

pha ちょっと観光で行ってもわからないから、居酒屋で飲むというのがよいかもしれない。

伊藤 県民性は面白いから、みんなわかりやすいのは知っているけれど、実際にそれが自分と相性がよいかと考える機会は少ないかもしれない。

安藤 日本は世界の縮図だと思っていて、世界と比較して編み出していってもいいかもしれない。高知は東南アジアかラテンか、ヨーロッパだとスペインとかの田舎の海のほうの町で、適当で、すぐ声をかけてくる。高知県人は、目が合ってニコッとして話し始めるぐらい、その人がどうか全く関係なく、そのまま「家に来い」ということもしょっちゅうある。だから高知だったらキューバとイコールみたいな。北海道も逆に外国っぽいところもあるし。

伊藤 かなりオープンな所だと思いますね、北海道は。

安藤 ちょっと似ているんですよ。でも全然違う。高知、沖縄は行ってみて、「まあいいや感」は似ているけど、沖縄は移住者には結構厳しいですよね。

伊藤 厳しい。その辺のイメージは、確かにあまり共有できていないと思います。何となく沖縄の気候だからオープンなイメージだけど、一方では歴史背景が全然違う社会がある。大学院のときに3週間ぐらい沖縄で調査をしていましたけど、一つの独立した文化圏だと実感しました。オープンで誰とでも仲良く暮らせる場所、という世間のイメージとだいぶ乖離していると思った。実際、移住者は多いんですよ。ただ、もう石垣島とかだと、移住者のみの住宅街とかできてしまっている。特に島は場所の余裕がないから、急激に移住者が増えると、元々住んでいる人の住む場所を圧迫してしまうことがある。

安藤 全国にいま移住者がいるじゃないですか。そこのリーダー的な人に語ってもらいつつ、最後に診断テストみたいな感じの本。自分はどこが合っているみたいな(笑)。

伊藤 それは親切だと思います(笑)。実際、そういう情報がいかにないか。

●逆参勤交代の必要性

安藤 移住を意識している人たちは、べつにいいと思うんですよ。既に自分たちが踏み出す力があるから。映画を観に行こうと思うか思わないかと似ていると思いますが、映画館に行こうと思う人は、既に映画が好きで、映画の魅力を知っていて行く。だけど、いまの時代は、テレビやスマホでいいやという人を映画館に引っ張ってくるのは超大変。別カテゴリーになってしまっているから。

 この本は、移住とか、地方で暮らすとか今まで全く考えたことがない人が、東京や大阪とかの都市では人という生き物がかなり不自然なことをしていることに気づく本ですね。

伊藤 都市はそうですね。無理していることをどこかで解消する工夫をしていかないといけない。

pha 都市は都市で面白いので、両方必要だと思って往復してるんです。地方の人もときどき都市に行くとか、往復したりしてほしいですね。

伊藤 そうだ、その逆は結構重要だと思います。

安藤 逆参勤交代みたいな。

伊藤 それは、いまの日本には効くと思います。そうすると、話ができることが増えると思う。全然都市から出ていない人と、1回見物に行って戻ってきた人と、移住した人といろいろ会話しても会話が繋がらなくて衝突しているので、実際に行ってみれば早いと思いますね。

 高知の人は、そういう意味ではすごくアクティブで、土佐山にレストランつきの、良い感じの宿がありますけど、そこは地元の人たち自らがドイツとかフランスとか世界を視察して、自分たちの予算で行ってつくっているからコンセプトがしっかりしてて、人気の宿ですね。

安藤 高知県はそんな人が多くて、たぶん、太平洋を見て育っているから、東京、大阪へ行かず、サンフランシスコに行ってきたとか、海外でいろいろ見て高知にバーンと帰ってきたみたいな人がすごく多い。なめてかかると、超インターナショナル。「東京とか知らんけど、俺、サンフランシスコに住んでた」とか、「パリに行って、ヨーロッパ回りで帰ってきてこんなことをやっている」とか。やっぱり、海の向こうに行ってしまえ方式というか。

pha いいな~。僕も、そういう海の開かれている雰囲気が好きで、山とかはちょっと苦手だけど。でも、山が向いている人もいるのかな。コツコツ籠ってやる人は、山がよいのかな。海でボーッとしていたいな。あったかいところで。       (後篇に続く)

後編は7月30日(月)更新です。

2018年7月23日更新

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伊藤 洋志(いとう ひろし)

伊藤 洋志

1979年生まれ。香川県丸亀市出身。京都大学大学院農学研究科森林科学専攻修士課程修了。仕事づくりレーベル「ナリワイ」代表。会社員を退職後、ライターをしながら2007年より、生活の中から生み出す頭と体が鍛えられる仕事をテーマにナリワイづくりを開始。著書に『ナリワイをつくる——人生を盗まれない働き方』(東京書籍)などがある。

pha(ふぁ)

pha

1978年生まれ。東京都在住。ギークハウスプロジェクト発起人。著書に『ニートの歩き方』『持たない幸福論』『しないことリスト』『ひきこもらない』などがある。近刊は『人生にゆとりを生み出す知の整理術』。

安藤 桃子(あんどう ももこ)

安藤 桃子

1982 年東京生まれ。 高校時代よりイギリスに留学し、ロンドン大学芸術学部を次席で卒業。 その後、ニューヨークで映画作りを学び、助監督を経て2010 年『カケラ』で監督・脚本デビュー。2011 年、初の長編小説『0.5 ミリ』(幻冬舎)を出版。同作を自ら監督、脚本した映画『0.5ミリ』が2014年公開。第39回報知映画賞作品賞、第69回毎日映画コンクール脚本賞、第18回上海国際映画祭最優秀監督賞などその他多数の賞を受賞。2018年6月『ウタモノガタリ-CINEMA FIGHTERS project-短編映画「アエイオウ」公開』。2017年10月高知市内に映画館「ウィークエンドキネマM」を開館。同12月ギャラリー「& Gallery」をオープン。現在は、高知県に移住。一児の母。

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洋志, 伊藤

フルサトをつくる (ちくま文庫)

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