ちくま新書

洞窟探検への招待

狭い、暗い、死ぬほど危ない! なぜ、そんなに苦しい思いをしてまで、洞窟に潜るのか? 「クレイジージャーニー」「情熱大陸」などテレビでおなじみの洞窟探検家・吉田勝次氏による『素晴らしき洞窟探検の世界』(ちくま新書、10月刊)プロローグの一部を公開いたします。 「洞窟王」吉田勝次氏の熱い思いと、冷や汗をかく危機一髪エピソードをどうぞ!
  沖永良部島「銀水洞」のリムストーンプール。暗闇の先に「素晴らしい世界」が待っている。(本書カバー写真)
    メキシコ「ゴロンドリナス洞窟」。深さ400メートルの縦穴を1本のロープで降下する(本書口絵より)


1 怖がりの洞窟探検家

†相当な怖がり
  暗くて、狭い洞窟に入っていくのはなぜ? とよく聞かれる。危険を冒してまでなぜ洞窟に潜るのか、不思議に思えるらしい。暗くて狭い場所が好きな変人に違いないと思われている節もある。ところが、僕は高所恐怖症で閉所恐怖症と、相当な怖がりなのだ。
 高所恐怖症は重いほうで、小学生の頃は、街中の歩道橋でさえ立って歩いて渡れないほどだった。大人になって登山に初めて挑戦したときも、岩壁や氷の壁を登っているときは足がガクガク震えて止らなかった。
 20代で洞窟探検を始めてからは、洞窟の狭いところを移動しているとき、急に恐怖心が襲ってきて前に進めなくなって、そのまま帰ったこともあった。深い縦穴に降ろしたロープにぶら下がる瞬間はいつも、ロープが切れるんじゃないか? と不安に思う。
 それにたくさんの支洞が迷路のようになっている洞窟では時々、迷ってしまうことがある。そうなると緊張感と恐怖心で押しつぶされそうになって、脂汗が出てくる。
 洞窟の中には水没しているところもあるので潜水することもあるが、水中で狭い部分をくぐり抜けるときは恐怖心が一気に高まり、「タンクの空気が残っているあいだしか生きられないんだ!」と、いつも最悪のケースを考えてしまう。
 探検家は向こう見ずと思われがちだが、このように僕は相当な怖がりである。なのに、なぜ洞窟に入るのか? 端的に言えば、そこには「素晴らしい世界」が待っているからである。どのように素晴らしいのか、それを本書で伝えていければと思っている。

                    狭いところを切り抜ける著者

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