死にそうになった数の分だけ、危険に敏感になった
石丸 洞窟は危険がたくさんあるから、かなり用心深いと思うんだけど。危険に対して備えるのって、普段からしてる? 例えば、交差点で待つときに、ふつうの人が立つところには立たないでしょう。
吉田 店に入る時も出口が見えて、全体が見渡せるところに座ります。
石丸 じゃあ、歩道を歩く時は?
吉田 ビルに近い、ギリギリのところを歩きますね。
石丸 僕も同じだな。
吉田 物が落ちる時って、すこし斜めにいくから、ビルのギリギリ下は大丈夫。その話を人にしても「ふーん」って反応だけど(笑)。
石丸 車を運転する時は?
吉田 カーブになった瞬間に、何台か先まで動きを見ますね。あと後ろも、追突されるんじゃないかと思って気をつけます。トラックが後ろについたら、必ず譲る。
石丸 そういう危険回避能力、なんで培われたと思う?
吉田 死にそうになった数の分だけ、危険に敏感になったんです。
石丸 小さい頃から、そんな機会はあったの?
吉田 じいさんが村会議員で、無縁仏の墓を作ってたような人なんですけど、そこに学校の休みごとに遊びに行ってたんです。それで山で迷ったり、ガケから落ちたりは、子供の頃からしてましたね。あと、じいさんが使ってた空気を入れるタイプのベッドを持ち出して、それで川を何十キロも下ったりはしてたかな(笑)。
石丸 現代は、危ないことは、まずやらせない。だから、みんな色々とやったことがなくて、危ないことがわからない。それで、ぼんやりしてますよね。だから、僕からすると、工事現場とか、地下道は怖い。逆に自然の中の洞窟だと、怖くない。
吉田 僕も、高架の下の道を走るのが嫌です。地震が起きて倒れて来そうだし。石丸さんと話してみて、「僕みたいに思う人が他にもいるんだ」と思いましたよ。
石丸 俳優をしていると、「そういうことを気にしていると大した奴にならねえよ」なんて言われるんだけど、「なら、ならなくていいよ」と(笑)。山なんかでも、「どんな危険なところでも平気だ」という人がいるけど、そういう人を連れていく方が怖い。ある程度怖がって、ちゃんと準備をしている人の方が安心です。
