献辞
私の金持ち父さんは、いつもこう言っていた。「ビジネスと投資はチームスポーツだ」。本を書くことについても同じことが言える──とくに、あなたが今手にしている本はその通りのものだ。
『金持ち父さんの 「大金持ちの陰謀」』によって私たちは歴史的な偉業を成し遂げた。
「金持ち父さん」シリーズ初の、真に双方向的なオンラインブックを経て書き上げた本書によって、私は未知の領域に踏み込んだ。有難いことに私には素晴らしいチームがあり、そのメンバーたちの力を借りることもたびたびあった。誰もが進んで本書のプロジェクトに進んで取り組んでくれたし、私が想像もしなかったほどの成果をもたらしてくれた。
何よりもまず、聡明で美しい私の妻キムの励ましとサポートに感謝している。キム、君は良い時もそうでない時もいつも私のそばにいて、この経済的自由への旅を共に一歩一歩進んでくれている。君がパートナーでいてくれるからこそ、私はこれほどの成功を収めることができた。
また、私の考えと本書の構成をまとめ、思いつきを現実の書籍にするのを手助けしてくれたジェイク・ジョンソンに感謝する。
そして、日々それぞれの持ち場につき、キムと私が情熱を傾けるプロジェクトのために、どんな時でも変わらぬ態度で私たちに長い時間でも忍耐強く付き合い、ファイナンシャル教育を広めそれぞれの責任を果たすという使命を分かち合ってくれているリッチダッド・チームのみんなに心から感謝している。君たちこそが、私たちの組織の生命力なのだ。
ロバートから読者へ
「変化」は起こったのか
残念ながら、本書『金持ち父さんの「大金持ちの陰謀」』の初版が刊行された二〇〇九年から大した変化は起こっていない。米国の銀行や政治家たちは、二〇〇七年の株式市場の大暴落を招いたときと同じ方向を進み続けているし、同じ政策をやり続けている。
アルバート・アインシュタインはかつてこう言った。「狂気の定義とは、同じことを何度も繰り返していながら違う結果を期待することだ」
彼の定義は、次のように書きかえなければならなくなった。「誰も気にしていないのだから、同じことをやり続けて何が悪い」
超富豪たちが世界経済のシステムを崩壊の危機にさらしたとしても、誰が気にするだろうか。国や州や市が全部破綻したり破綻の危機に直面したりしても、誰が気にするだろうか。何百万という人々が失業しても、何百万という人々がマイホームを失ったとしても、誰が気にするだろうか。金持ちが幸運なときはますます金持ちになり、金持ちが不運なときは納税者がそのツケを支払わされるからといって、誰が気にするだろうか。
一言で言うと、「大金持ちの陰謀」が金持ちをますます金持ちにしてきた。銀行家たちは刑務所に入れられるどころか、何十億ドルものボーナスをもらった。汚職政治家たちは、裁判にかけられるどころか同じようにひじょうに腐敗した企業からアルバイトをもちかけられ、銀行強盗が発生している間の見張り役を買って出ている──政治家こそが不正の監視者であり、選挙民やアメリカ市民の擁護者であったはずなのだが……。
これまでのところ、トップレベルの銀行家や政治家は一人も有罪になっていないし、それどころか裁判にかけられるといったことすら起こっていない。
言い換えれば、『金持ち父さんの「大金持ちの陰謀」』の初版が二〇〇九年に刊行されて以来、状況はあまり変わっていないのだ。
この国の魂に何が起こってしまったのだろうか。私たちは本当に無関心になってしまったのだろうか。それとも、何が起こっているのかさっぱりわからない状態なのだろうか。新しい次期大統領が物事を良い方向に変えてくれると本当に信じているのだろうか。それとも、私たちまでもが魂を失ってしまい、次の大暴落が起こる前に可能な限りたくさんのお金を手に入れられればいいということぐらいしか頭にないのだろうか。
私は、一九八三年当時のバックミンスター・フラー博士の言葉が、この状況を最も的確に言い表していると思う。彼は次のように述べている。
「暗黒時代は今もすべての人類を支配しており、この支配がいかに根深く持続的なものであるかが、今頃になってようやく明らかになりつつある」
「現代の暗黒時代の牢屋には、鉄格子も鉄の鎖も鉄の鍵もない。現代の牢屋は誤った情報を資材として建てられており、誤った方向付けによって施錠されている。看守も囚人も、持て余すほどの無条件反射に捕われ、自分の自負心に突き動かされ、無力であるのに神と競おうとする。自分が理解していないことに対しては、誰もが救いようがないほど懐疑的なのだ」
やはり、事態は二〇〇九年の時点からさして変わっていない。だが、本書を読む人にとってはそれが朗報となるかもしれない。長い歴史の中で起こってきたことが、今も同じように続いていると気づくことができるからだ。
私が二〇〇九年にあなたのために本書を書いた理由
一九七一年、当時の大統領リチャード・ニクソンが、連邦議会の承認も得ずに、米国ドルと金の交換を停止し、お金のルールを変えた──このとき、米国だけでなく、世界中のお金のルールが変わった。このルール変更は一連の変更の一つで、二〇〇七年に始まった今の金融危機につながっている。このルール変更によって、米国は事実上、紙幣を無制限に印刷することができるようになり、好きなだけ借金ができるようになったからだ。
今の経済危機は、偶然に起こった一回限りの出来事だろうか。そうだと言う人もいる。だが、私は違うと思う。
権力者たちに、この経済危機を解決できるだろうか。そう望む人が多いが、やはり私の答えは「ノー」だ。この危機を招き──そのおかげで儲けた──張本人たちとその組織がいまだに権力を握っているのだから、危機を解決できるはずがない。
問題はその危機が、人々の望んでいるように消えていくどころか、ますます大きくなっていることだ。一九八〇年代、政府による救済措置の規模は数百万ドルだった。一九九〇年代になると、その額は数十億ドルになった。そして今では、数兆ドルの規模になっている。
私は危機という言葉を、「何の前触れもなく突然に起こる変化」だと定義したい。個人的な意見だが、私たちの指導者が自らを変えるとは思えない。それは、その代わりにあなたや私が変わらなければならないことを意味している。
本書のテーマは陰謀だが、私はここで魔女狩りや、誰かの責任追及や辞任要求をするつもりはない。知っての通り、この世は陰謀であふれているし、その中には無害なものもあれば、悪意のあるものもある。スポーツの試合で、ハーフタイムにチームがロッカールームに戻る度に、技術的に言えば、彼らは相手チームに対する陰謀をめぐらせている。自己の利益のあるところ、必ず陰謀が存在する。
本書のタイトルを『金持ち父さんの「大金持ちの陰謀」』としたのは、大金持ちが、銀行や政府、金融市場を通じていかに世界経済を操ってきたかについて書いているからだ。知っている人もいるかもしれないが、それは、何世紀もの間続いていて、これからも、地上に人類が存在する限り続いていく。