マイテーマ? 探究学習?
自分でテーマを決めて「調べる学習」をしたり「研究論文」を書いたりする、そんな「探究学習」の機会が増えています。私の中学校でも探究学習に力を入れていて、中学1年生からはじめて、3年生では1万字を超える卒業論文を、約1年をかけて書いています。
「そんなめんどうで苦しそうなことイヤだな」「だいたい学んでみたいことなんかないよ」そう思うかもしれませんね。たしかに探究学習は大変です。でも経験した先輩に聞いてもらえばわかります。自分の興味で学んでいたなら、「大変でもホントに面白いよ。大事だよ」ときっと言うはずだからです。
とはいえ、「なにを題材(対象)に学ぶか」「なにをテーマ(問い)にして学ぶか」が悩ましいところです。ここを見定められたなら半分以上できたようなものです。つまり、探究学習の道のりは、マイテーマ探しの道のりと重なっています。だからこの本のタイトルは「マイテーマの探し方」なんです。マイテーマ探り当てるための手助け、それがこの本の目的です。探究学習という「学びの旅」のガイドブックです。この本で紹介されている例は中学生(一部は高校生)のものです。しかも、出てくる題材やテーマはネコやアニメやカラオケなど、とても身近なものですから、きっとみなさんも興味を持ってくれると思います。
「どうして探究学習なんかしなくちゃいけないの?」「中身が決められたフツーの授業がいいな」。なるほど。でも、考えてみてください。人生は「マイテーマを決める連続」なんです。高校にも「総合的な探究の時間」があり、大学には卒業論文があります。そんなのは序の口で、進学や進路選択といった決断は、「自分が何をしたくてどう進むべきか」という、マイテーマを考えることそのものです。もちろん、社会に出てからも、仕事を生み出すのはもちろん、「自分は何者なのか」「どこに行って何をすべきか」という問いを、時に自分に発しながら生きていくものなのです。要は、だれかのロボットにならないで、人生を主体的に生きるためにも、チャンスがあれば、マイテーマを考えて欲しいのです。
なんだかわかったような、わからない話かもしれません。いまはそれでもいいのです。この本は小さな本ですが、みなさんがマイテーマを探すヒントが詰まっています。ぜひとも探究学習に挑戦してください。学びたいことを学ぶのは、大変でもめちゃめちゃ楽しい経験です。なぜって、自分の興味をとことん追求できるのですから。だから、「なにを学びたい?」という探究学習のスタートの質問は、「なにして遊ぶ?」と、実はとても近いのです。学べば学ぶほど、みなさんの前には大きな世界が広がります。扉を開いて、マイテーマという宝物を探しに行きましょう!
❖ この本の構成
この本は5つの章からできています。はじめての探究学習である「ミニ調べる学習」から、一般的な「調べる学習」、そして本格派の「研究論文」まで、学びの道のりに沿って、構成されています。
第1章は「ミニ調べる学習――画用紙1枚で探究学習をはじめよう」です。画用紙1枚に興味を持ったことをまとめてみる、探究学習の準備運動です。それほど時間はかかりませんが、この中には探究学習の基礎が詰まっています。探究学習がはじめて、というひとはまずここからスタートです。
第2章は「マイテーマの探し方①――調べる学習の題材を見つけよう」です。この章では中学生の探究学習を例にしながら、調べる学習でなにを学ぶのか、その〝題材〟探しを解説しています。なにより興味があり、しかも資料も見つかる題材が、探究学習には必要です。とはいえ、その途中で迷ったり悩んだりするのはふつうで、何度も変更する場合も少なくありません。この章では、企画書を書いて、本に学びながら題材をしぼっていく道のりを紹介します。さらに、いっけんおちゃらけて見えても立派に探究学習になる事例や、逆に近づかないほうがいい分野について紹介しています。
第3章は「調べる学習・研究論文の基礎――ピースを作って情報を集めよう」です。調べる学習の題材が決まったら、資料から引用をして、作品の部品を作ります。引用にコメントと出典(引用のでどころ)を添えた文章をこの本では、「ピース」と呼んでいます。ピースで大変なのはコメントですから、そのコツも伝授します。ピースが集まれば調べる学習の土台が生まれ、もっと集まれば作品の完成形が見えてきます。加えて、図書館やインターネットの使い方についても紹介します。
第4章は「フィールドワーク・プロジェクトでリアルに学ぼう」です。どなたかに取材するフィールドワーク、実験や工作・調理などに挑戦するプロジェクト、これらの経験は、探究学習で一番の思い出になるでしょう。取材の申し込みなどの具体的な手順や注意点を解説します。
そして第5章は、「マイテーマの探し方②――テーマ(問い)を設定して研究論文をデザインしよう」です。いよいよ、テーマ(問い)を設定して結論(答え)を導く、研究論文のデザイン、ストーリー作りです。問いの立て方について、注意したいテーマ例とともに解説します。ここを乗り越えて作品が完成できたら、超中学生級です。
最後は「付録――仲間の学びを助けよう」です。仲間や後輩にむけて、どんな支援ができるのかを紹介しています。探究学習を手助けできるのは先生や司書の方ばかりではありません。みなさん自身が、アドバイスや添削で役に立つ機会がたくさんあるのです。