本書は、あなたが関わるすべてのプロジェクトを成功に導く「旗印になる一行のコピー(=「川上コピー」)」の事例と、その作り方・掲げ方について書かれたものです。
想像してみてください、川の流れを。
どんな大河であっても、元をたどれば山奥の源流にいきつきます。
そこから湧きだした一滴の水が、山を下ってやがて大きな流れになり、ゴールである海へとたどり着くのです。
そんな川の流れのように、会社経営からあらゆる仕事や生活におけるプロジェクトにも、川上から川下の流れがあるのではないでしょうか? ゴールである川下での施策や成果に目を奪われがちですが、重要なのは「川上」です。
「川上」とは……
「経営」における「理念」「ミッション」であり、
「事業」における「定義」であり、
「マーケティング」における「戦略」であり、
「商品開発」「広告制作」における「コンセプト」であり、
「プロジェクト」における「大義」であり、
「部署」「チーム」における「目標」であり、
「マネジメント」における「行動指針」であり、
「起業」における「志」であり、
「会議」における「アジェンダ」であり、
「スピーチ」における「信念」であり、
「政策」「事業計画」における「グランドデザイン」であり、
「コンテンツ」における「テーマ」「世界観」であり、
「もの作り」における「哲学」であり、
「人生」における「アイデンティティ」「ライフプラン」であり、
「子育て」「学校」における「教育方針」であり、
「政治」「行政」における「ビジョン」でもあります。
つまり、「川上」とは、ビジネスや人生のさまざな場面において、それぞれの上流にあり、川中、川下を決めていく背骨になるもののことです。
「川上」が重要であることに反論する人は少ないでしょう。
ただ忘れがちなことがあります。
「川上」における方針を、きちんと言語化する必要があるということです。
言語化されない曖昧な状態では、「旗印」や「指針」になりません。人は言語化されてはじめて、きちんとイメージでき、誰かと共有できるようになるからです。
成功しているプロジェクトの多くは、「川上」における「言葉」が明確です。
その言葉が、きちんと「旗印」や「指針」として機能しています。そのプロジェクトの向かう先を示す、「北極星」のような役割を果たしている「言葉」があるはずです。
逆にその「言葉」があやふやだったり弱かったりすると、川の流れは途中で途切れてしまいプロジェクトは難破してしまう可能性が高いでしょう。羅針盤のない船のようなものです。
あなたが今関わっているプロジェクトの「川上」には、「旗印」や「指針」となる明確な「言葉」がありますか?
その「言葉」で「実現した時の未来」が、きちんとイメージできますか?
それは長くなればなるほど伝わりません。凝縮された一行であることが大切です。
できれば一五文字以内が望ましい。
人間が一度に憶えることができる文字数が、それくらいだからです。
本書では、それぞれのプロジェクトの一番上流にあり、川中・川下を規定する「旗印」や「指針」となる凝縮されたフレーズのことを、「川上コピー」と名付けました。
きちんと機能する「川上コピー」が掲げられ、それがメンバーに共有されていると、そのプロジェクトが成功する確率は格段に上がります。
どんなに小さなプロジェクトでも、成功させるには「旗印となる方針」=「川上」を言葉にしておくことが必要不可欠です。それさえあれば、迷った時や失敗したときにもその言葉に立ち返り、立て直すことができるのです。「川上コピー」をさまざまな企業で提案し、成功に導いてきた著者が、その意味や作り方、使い方をわかりやすく解説します。
ちくま新書の8月刊『川上から始めよ--成功は一行のコピーで決まる』、その冒頭部分を公開します。