ちくま新書

フェイクニュースを笑い、情報戦の勝者になる

拡散される「フェイクニュース」、「ステマ」に「粘着」そして「炎上」。ネット社会は悪意と敵意に満ちあふれた「コワイ場所」……そう思っていませんか?
心配ご無用、フェイクの見破り方から炎上の鎮火術、粘着の上手な撃退法まで、ネットで勝ち抜く技術を全部教えます!
講演回数は2000超、グリー株式会社社会貢献チームマネジャーが贈る9月刊ちくま新書『ネットで勝つ情報リテラシー』の冒頭を公開します。

 二〇一六年のアメリカ大統領選、その後のトランプ大統領の発言などから「フェイクニュース」という単語を耳にする機会が増えました。

 「フェイクニュースって、ネットに書かれた無責任なデマだろう? ネットの情報なんて最初から信用していないよ」

 このように言われる方もいますが、いやいや、フェイクニュースはそんなに甘いモノではありません。私もあなたもフェイクニュースと無関係ではいられない。それどころか、たとえインターネットを使っていない時でも、あなた自身がフェイクニュースの「発信源」になる可能性だってあるのです。
 そもそもフェイクニュースとは何なのでしょうか? 一般的には次のようなものがフェイクニュースだと言われています。

 虚偽の内容を含む情報・ニュースのうち、意図的に捏造・発信されたもの。
 主にインターネット上で発信・拡散されたものを指す。
 
 これがフェイクニュースの定義……らしいのですが、私はまずこの定義そのものが間違っていると感じています。虚偽? 意図的? なぜ「主にネット」なの? 詳しくは本書でご説明しますが、「情報の本質」を考えれば、こんな定義、じつは一瞬で吹き飛んでしまうのです。

 私は企業に勤めるサラリーマンでもあります。「グリー」という企業のCSR(社会貢献)部門で、全国の企業や学校に出向き、ネットリテラシーについて講演するのが仕事です。そもそもリテラシーとは「読解力」「記述力」といった意味の言葉ですので、私はネットリテラシーを、「ネットの本質を理解し、その情報を用いて適切な振るまいができる能力」と解釈しています。言ってみれば、ネットを使う際の「心の免許証」みたいなものでしょう。そして当然ながら、そのネットにもフェイクニュースはあふれ返っています。
 実はこの本、最初の企画書では「任天堂の倒し方(仮)」というタイトルでした。どうやら私が働いているグリーという会社は、あの世界的企業「任天堂」を打ち負かす方法を知っているらしいのです。このエピソード、ご存じでない方のために説明しますと……。

 ある人が転職の面接でグリーを訪れた際、その面接を担当したグリー社員から、
 「任天堂の倒し方を知っていますか? 私たちは知っていますよ」
 という趣旨の発言があった。その人は、それを聞いてグリーに入社するのをやめた。
 
 これは、とあるメディアに掲載された記事を要約したものですが、この記事はあっという間にネットで拡散、世の中に知れ渡りました。今でも「任天堂の倒し方」というキーワードでネット検索すれば、当時、この話題を面白おかしく取り上げた記事や、SNSへの書き込みが山ほど見つかります。

 この「任天堂の倒し方」を仮タイトルにして、社内会議でそれとなく伝えたところ(本書の出版は個人的な活動ですが、報告が必要なのです)、会議参加者たちの表情は、なるほど、これが苦虫をかみ潰したような顔というヤツですね、という非常にわかりやすいもので、絶対にNOという確かな手応えを感じました。この本にピッタリのタイトルなんですけどね……。
 
 本書は、情報のウラを理解し、自分が発信する情報をコントロールしながら、「情報による攻撃」への反撃テクニックまでお伝えする「大人の情報リテラシー入門書」です。ネットや現実世界で、誰もが情報を手に入れ、発信する時代に、「フェイクニュースを笑い、情報戦の勝者になる」ためのテクニックが、きっとあなたの人生を、豊かなものに変えてくれるはずです。

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