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司法試験、弁理士、一級建築士、難関資格の合格者が多い大学はどこ?
『大学マップ』より本文を一部公開!

偏差値や知名度に左右されず大学をテーマ別にマッピングすることで、あなたにあった大学が見つけられる『大学マップ』より本文の一部を公開します。公認会計士や弁理士、一級建築士などの難関資格をとりたい場合はどんな大学に行けばいい?

司法試験、公認会計士、弁理士

 たいへん残念なことだが、いま、司法試験に合格者を出す大学はきわめて限られている。2004年法科大学院制度が誕生し、最盛期には74校あった。しかし、2022年40 校が募集停止となっている。残った34校のうち司法試験合格者数が多い法科大学院を並べると、国家公務員総合職試験合格者上位校や入試難易度に近いものができあがってしまう。

 司法試験の合格率は2022年で45.5%だった。東京大、一橋大、慶應義塾大、京都大、大阪大が合格率5割前後を推移しており、なかでも一橋大は18年59.0%→19年55.63%→20年70.59%→21年58.18%→22年60・0%と高い水準を維持している。

 一橋大法科大学院の仮屋広郷教授はこう話す。「特別な教材や設備があるわけではなく、秘訣といえば、互いに学び合う風土」(「朝日新聞EduA」2019年5月15日)。ゼミを中心とした少人数教育の校風や、弁護士を中心とした大学出身者によるサポートが好結果を生んだ。一方で合格率がふるわないのが、かつて司法試験に実績があった私立大学で、中央大26・18%、明治大18・6%、上智大13・33%はかなり厳しい。

 2021年の司法試験最年少合格者は慶應義塾大法学部の男子学生で18歳3カ月(受験時)で合格を果たした。慶應義塾高校3年のときに予備試験に受かり、大学に入学して合格している(予備試験の合格率は4%。合格者は法科大学院修了が免除され司法試験を受験できる)。

 公認会計士試験合格者数は慶應義塾大が1975年から2022年まで48年連続1位となっている。同校では1980年商学部に会計研究室を設置した。「ガイダンス、講演会、監査法人見学会等、種々の啓蒙的なイベントを企画・実施し、学部・学年を問わず、広く門戸を開いたサポートを行っています」(公認会計士三田会ウェブサイト、2022年1月13日)。

 弁理士とは発明や商品名などの権利である特許権、意匠権、商標権、著作権などの出願手続きの代理業務、そして取り消しや無効とするための審査請求手続き、異義申立ての手続きの代理業務を行っている。大学にとってはなじみが深く、ノーベル賞クラスの研究成果をどう守るか、弁理士の腕にかかっている。弁理士試験には論文式があり、次の6つから選択する。①理工Ⅰ(機械・応用力学)、②理工Ⅱ(数学・物理)、③理工Ⅲ(化学)、④理工Ⅳ(生物)、⑤理工Ⅴ(情報)、⑥法律(弁理士の業務に関する法律)。理系分野が揃っているのが大きな特徴だ。弁理士試験合格者上位校に東京工業大、東京理科大、電気通信大、大阪工業大などがあがってくるのは、理系に強い学生が志望するからである。

一級建築士、技術士

 一級建築士に任される仕事の特徴は小さな戸建住宅からオリンピック競技場まで、「設計する建物に制限がない」ことである。国立競技場の隈研吾、東京都庁の黒川紀章などが有名だ。日本大がもっとも多い。理工、工、生産工の3学部には建築系学科があるからだ。定員は理工学部建築学科250人、工学部建築学科180人、生産工学部建築工学科198人で合わせて628人という大所帯だ。2021年、理工学部建築学科の主な就職先には大手の建築会社、住宅メーカーが並ぶ。清水建設8人、奥村組4人、五洋建設5人、フジタ3人、大林組2人、竹中工務店1人、大成建設1人、鹿島建設1人、熊谷組1人、三井ホーム4人、積水ハウス7人などだ。 

 最近、一級建築士国家試験で武庫川女子大、日本女子大が健闘している。2020年、武庫川女子大建築学部(建築学科45人、景観建築学科40人)の前身は2006年開設の生活環境学部建築学科であり、このころから建築家養成を掲げていた。教育内容について大学はこう胸を張る。「1学年定員45人を3人の教員が担当し、教員が各学生の製図机をまわって一対一のきめ細かい指導を行います。また、演習に必要な材料のほとんどが大学から支給されます」(同校ウェブサイト)。

 日本女子大は、2024年4月に「建築デザイン学部(仮称)」の設置を計画している。これまで国家試験に合格者を出していた日本女子大家政学部住居学科が学部に発展する形だ。

 女子大で一級建築士を目指すことができるのは、昭和女子大環境デザイン学部環境デザイン学科、京都女子大家政学部生活造形学科、奈良女子大工学部工学科環境デザイン分野がある。

 技術士について文部科学省はこう定義する。

「科学技術に関する技術的専門知識と高等の専門的応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた、優れた技術者」。

 お役所言葉ゆえわかりにくいので、すこしくだけた言い方をすれば、たとえば、技術コンサルタントとして建築に関する計画、研究、設計、分析、試験、評価に関する指導を行っている。建設会社の技術開発や研究を担当する部門で専門知識を活かせる。最近では、コンサルタントとして独立するケースも増えた。

 工学系で幅広く活躍できるのは、技術士試験において、21の技術部門の専門知識が試されるからだ。機械、船舶・海洋、航空・宇宙、電気電子、化学、繊維、資源工学、建設、上下水道、衛生工学、農業、森林、環境、原子力・放射線などである。

 各大学工学部で技術士試験対策に力を入れている。東京都市大はこう伝える。「技術士は、科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威ある資格(文科省HPより)であり、本学では、東京都市大学柏門技術士会や校友会の協力を得て、在学生へ「技術士第一次試験」の受験を奨励しています」(同校ウェブサイト)。



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