はじめに
「頭が良くなりたい!」
「でも、頑張ってもあんまり成績上がらないんだよなー」
そう思ったことはありませんか?
僕はあります。めっちゃあります。なぜなら、僕は小中高ずっと、東大合格者なんていない学校の学年ビリで、赤点ばかり取っている、「勉強できない子」だったからです。頑張って勉強しているはずなのに全然成績が上がらず、友達からはバカにされて。「どうして僕は、こんなに頭の出来が悪いんだろう」と悩んでばかりの学生生活を送っていました。しかし、そんな「学年ビリ」の僕でしたが、高校3年生のある日から、東京大学を目指すことにしたのです。
「勉強ができなくて馬鹿にされてきた人生だったけれど、ここで逆転させよう」
そう思って、東大を目指して必死に勉強を始めたのです。さて、そこでやはり一番の悩みになったのが、「どうすれば成績が上がるのか」ということでした。一念発起して勉強に向き合い、頑張って平日3時間勉強しても、大好きだったゲームと漫画を封印して1週間で50時間勉強しても、あんまり成績が伸びなかったのです。
「なんで自分はこんなに勉強ができないんだ。やっぱり勉強ができるかできないかは、生まれつきの才能なのか……」と悩んで、僕はある行動に出ました。僕のその当時の実力にはまったく見合っていない、東大受験生しかいないようなめちゃくちゃレベルの高い塾の講習に行き、東大を受験する人はどんな人たちなのか探ってみたのです。
そこで、僕はあることに気づきました。「あ、この人たちと自分とは、そもそも使っている言葉自体が全然違うわ」と。頭のいい人たちは、慣用句も四字熟語も、ことわざも専門用語も、日常会話のレベルからずっと使っていました。
僕はその当時、「すごいね」「おもしろいね」「危ないね」「大変だね」などのニュアンスを伝えたいとき、ぜんぶ「ヤバイね!」と言っていました。でも頭のいい人は、「すごい」一つを取っても、「感銘を受ける」「素敵」「すばらしい」「さすがだ」「驚異的」「途轍もない」など、いろいろな言葉で表現していたのです。
「もしかして、普段使っている言葉の差や知っている言葉の量の差が、学力の差になっているんじゃないか」、そう思って観察していくと、自分の仮説は当たっていました。言葉の知識=語彙力こそが、自分に欠けていたものであり、頭の良さを作る源泉だったのです。
たとえば自分は教科書を読んで勉強していましたが、そもそも教科書の言葉がちゃんとわかっていなかったのです。
社会「この王朝が凋落した」
数学「Aという数字が累積した場合」
理科「対照実験を行った」
英語「be willing to は「やぶさかではない」という意味だ」
このような文章を、なんとなくわかっているからと深く考えずに読んでしまっていました。国語だけでなく、英数理社も含めてすべての科目で、語彙力に足を引っ張られていたのです。
また授業中にも、「この問題は典型的だから覚えておいてね」と先生が言ったのに対して、「そういえば典型ってなんだろう? とにかく重要なんだな」とだけ考え、先生の言った意味が実はわかっていないということが多々ありました。
教科書や普段の授業に登場する言葉の意味をぼんやりとしか理解しておらず、その状態で勉強しているものだから基礎がガタガタで、何時間勉強しても穴の開いたバケツに水を入れるかのように何もうまくいかなかったのです。勝手に自滅していたんですね。
さて、ここで皆さんにも聞いてみましょう。先ほど「語彙力=頭の良さを作る源泉」とお話ししましたが、この「源泉」ってどういう意味か本当にわかっていますか。源泉とは、「泉のように、物事や考えが発生する源のことで、それがなければそこから先に何も生まれない根幹にあるもののこと」を指す言葉です。これをしっかりと説明できる状態ではないのに、「まあ大体こういう意味だろう」と考えてスルーしていませんでしたか?
東大を受験する人たちや、東大に合格している人たちは、みんなこの語彙力に長けています。言葉をよく知っているだけでなく、漢字の勉強をしっかりしているから「この言葉はこういう意味だろう」という類推もうまく、どんな勉強をしてもどんどん知識を吸収できるのです。
ということで、東大受験者の語彙力の高さに気づいた僕は、各教科の勉強をする前に語彙をたくさん学習しました。小学校の漢字練習帳から勉強して、中学・高校の国語の語彙力の参考書を買って、一生懸命解きました。すると、あんなに上がらなかった成績が一気に上がって、最終的に東大に合格できたのです。
本書は、そんな僕の経験から、「語彙力をつけるにはどうすればいいか」「頭が良くなりたいなら知っておくべき語彙」をご紹介するものです。全体の構成をざっくり説明しますと、PART1では、もっと詳しく語彙力についてお話しします。PART2では、各科目を勉強する前に知っておきたい語彙について説明します。そしてPART3では、実際にもっと語彙力を鍛えるためにはどうすればいいか、実践問題を交えながらご説明します。
また、本書の執筆にあたっては現役の東大生たちにも協力してもらいました。僕が在学中に立ち上げたカルペ・ディエムという会社があり、東大生のメンバーと一緒に教育や勉強に関する講演会や出版活動をしているのですが、そのみんなで考えた企画になります。
自分たちが受験勉強をしていたときに知って役に立った語彙や、受験勉強をする「前」に知っておいてほしいと思う語彙、そもそもどんな力のことを「語彙力」と呼ぶのかなど、相談しながら書いていきました。そのため僕たちの実体験も大いに反映された内容になっています。
そしてもう一つ、本書の特徴として、この本は全体を通して極力簡単な言葉を使って書いています。せっかく「語彙力をつけたい」と思って本書をひらいたみなさんが、立ち止まることなく、最後まで読み通せるような本を目指しました。1冊読み終わったときにはきっと「語彙力がどんなもので、どうやって高めればいいのかわかってきたぞ」という感覚になっていると思います。
語彙力について学校で習う機会はすごく少ないですよね。語彙力ってなんだろう?という授業はあまりありません。つまり、語彙力は、みなさん自身が勉強して鍛えるししよう!」と思わなければ、身に付かないわけです。みなさん、今がその時です。この本を読んで、ぜひ語彙力を身につけてください。かないのです。誰かから教わるのを待っているのではなく、みなさんが自分で、「勉強しよう!」と思わなければ、身に付かないわけです。みなさん、今がその時です。この本を読んで、ぜひ語彙力を身につけてください。
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