■『死してなお踊れ』は長渕剛入ってる
ブレイディ 私、『母の友』に栗原さんの『死してなお踊れ』の書評を書かせていただいたんですよ。野枝本は女性を書いているから女性目線が入っているじゃないですか。こっちは本当に……。
栗原 男子です。
ブレイディ ですよね。長渕が結構入っている感じがしたんですよね。栗原さんって文章上手いじゃないですか。この崩しの文体で、音楽ファンからしたらレイヴ感満載みたいな。仏教レイヴ本みたいな言葉で攻めてくるのでまずビックリしました。去年栗原さんにお会いしたときに、今、一遍について書いていると言われて、「でも一遍って憑依しちゃうと結構自分も危ないことになりませんか」って聞いたら、「いやあ、そうですかねえ」って。その辺はどうでした?
栗原 ヤバかったですね。一遍は真冬でも衣一枚でだんだん破けて素っ裸で歩いてたりするんですけど、本当にそれで風邪引いて死にそうになったりとかしてますね。それで一枚くらいはちゃんと羽織ろうって規則をつくったりする。僕も書くからには真似しなきゃと思って、真冬でもTシャツ一枚とかで……。でもすぐ死にそうになってやめました(笑)。家で暖房入れていれば大丈夫なんですけど(笑)。
■金子文子と伊藤野枝の生
ブレイディ 栗原さんの評伝って、憑依している感じで書かれてるじゃないですか。私も今、金子文子を書いているんです。金子文子は、亡くなり方について、自分で縊死したのかもしれないし、そうでなかったかもしれないと、諸説いろいろあるじゃないですか。けど、もしも自分で死んでいたとしたら、どうして死んだんだろうなという好奇心から書きたくなりました。私は何があっても生きていきたいタイプだから、金子文子とは逆だとおもうんですよ。伊藤野枝も、自殺とかは、考えにくいでしょう?
栗原 考えにくい。たぶん野枝はブレイディさんに近いと思いますね。這ってでも生きていくぞみたいな。
ブレイディ けど、そういう私もたまたま生き延びているんじゃないかというか、いまもすごいヘラヘラして生きていられるのは、きっとイギリスに行っているからなんですよ。もともと日本から出ていきたかったし。貧乏とかはまああるにせよ、私もやりたいように、わりとやってきてる。でも、もしずっと過去21年間日本に住んでいたとしたら、死にたい気分にフッとなったことはなかったかなあと最近妙に感じ始めてきて、こういうことを本気で感じ始めるとヤバいのかなと。