■長渕剛とモリッシー
ブレイディ ところでモリッシーも万引きについての歌詞を書いているんですよ。「世界の万引き野郎ども、団結せよ」というね。
栗原 カッコよすぎですね~。
ブレイディ 私もモリッシーの本を書いたときに、「モリッシーはアナキストだ」と書いたら一部で怒っている人もいるんですね。モリッシーも結構そんな気があるんじゃないかなと思っているんですけどね。
栗原 万引き野郎どもが、団結したら一網打尽にされそうですけどね(笑)。
ブレイディ きょう、ある方と話していたら、私の書いた『いまモリッシーを聴くということ』の中で私が核心だなと思っているところを突いてきたので「おお」と思ったんです。「マニキュアをつけたスキンヘッド」という言葉が、「ここが肝ですね」とその方に指摘されて、これはモリッシー自身もすごく好きな言葉で、それが一番自分のアーティストとしての特徴を言い当てていると思っているみたいなんですね。それで私も、そうなんです、それを副題にしようと思ってたぐらいです、と言ったら、その方が、長渕剛がマニキュアをつけたらモリッシーになるんじゃないかと。
栗原 うわ~……。
ブレイディ でも、私はそれには反対というか、頑なに認めたくなかったから、「そうですか~?」と言ってたんですけど(笑)。長渕剛って、今すごく人気があるじゃないですか。
栗原 いや、たぶん、ほんの一部だと思います。最近、友人のアナキストたちと一緒に「長渕、すごいぞ」と言いはじめているだけで……。
ブレイディ アナキストと長渕の繋がりって何なんですか? 森さんも、このあいだバーベキューのあとに、しこたま酔って歌っていたらしいんですよ。
栗原 実は、ちょうどその酔っぱらっているときに電話がかかってきたんですよ。そうしたら、森君がしょっぱなから、「アオ、アオ、アオ……」……。長渕の新曲です(笑)。長渕は、「日の丸」とかでマッチョでナショナルなイメージが強いんですけど、政治的には反原発や反安保法制、反戦だったりして。あるいは、そういう真面目なことを言わなくても、もともと反社会なんですよね。カネとか地位とか、ひとを物差しではかって、「こうやって生きろ」っていってくるものに対して、唾を吐きかけてやれみたいな。ひたすらそういう歌をうたいまくっています。じゃあ、社会にしたがわないなら、どうすりゃいいのかというと、「おまえがやれー、おまえが舵を取れー!」と。
ブレイディ 栗原さんも、カラオケ行ったらものすごい熱唱するんですよね。周りの人が見えてないぐらいの熱唱。それで私が何を歌っているかというと、シーナ&ロケッツとか、80年代の……。
栗原 これがまた、上手いんですよね~。
ブレイディ 私は博多のめんたいロックとか、やっぱ歌っちゃうんですけど、世代的に。