ちくまプリマー新書

中学校の1クラスに2人いる「ヤングケアラー」――子どもがケアを担う背景にあるものとは
『ヤングケアラーってなんだろう』より「はじめに」を公開

家族の世話や家事を行う子どもたちを指す「ヤングケアラー」。彼らがおかれた状況や支援の取り組みを知るための一冊『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)が刊行されます。本書の「はじめに」を公開しました。

「ヤングケアラー」とは、家族にケアを必要とする人がいるために、本来大人がすると想定されているような家事や家族の世話などを行っている18 歳未満の子どもや若者を指す言葉です。

 ヤングケアラーは、慢性的な病気や障害、精神的な問題、高齢や幼いといった理由で看護や介護や見守りなどを必要とする家族の世話をしています。毎日の食事の用意や後片付け、洗濯、ゴミ出し、買い物、きょうだいの世話。ケアの必要な家族の話を聞いたり、元気づけたりするなどの感情面のケア。中には、病院への付き添い、救急車への同乗、自宅での経管栄養のケア、薬の管理、金銭管理をしている中高生もいます。

 未成年の子どもがこうした家族のケアをするということは、これまで日本では「美談」と捉えられてきました。確かに、ケアをすることは大変であっても、自分が家族の役に立っていると感じ、家族の絆が強まったと思っているヤングケアラーもいます。また、ケアを担うことを通して、年齢の割に高い生活力を持つようになったり、タイプの異なる複数の作業を同時に進めるマルチタスク力が磨かれたり、トラブル対応がうまくなったり、人の話を聞くのが上手になったりして、ヤングケアラーが身につける力もあると言われています。

 しかし、ヤングケアラーが、誰からのサポートも得られないまま、その年齢にしては重すぎるケアの責任や作業を長年にわたって担っていると、その生活にマイナスの影響が出てきてしまうこともあります。

 遅刻や欠席をしてしまう、宿題や課題が期限に間に合わない、良い成績が取れないなど、学校生活への影響が出ることもあります。友達づきあいや部活や趣味などに充分に時間を使えなかったり、感情的にも身体的にも疲れていたり、身近にケアのことを話せる相手がほとんどいないと孤独を感じたりすることもあります。毎日のケアに追われる中で、自分の健康や将来について考える余裕のない人もいます。いろいろなことが積み重なって、自己肯定感が低くなってしまう人もいます。子どもや若者にとって、その年齢でしかできないことというのは確かにあって、後になって「もうあの時は戻ってこない」と感じる元ヤングケアラーもいます。

 この本では、子どもがケアを担うことの背景には何があるのか、なぜ今になってヤングケアラーが注目されるようになったのか、自治体や国が行っているヤングケアラー実態調査から何がわかるか、ヤングケアラーはどんな体験をしているのか、ヤングケアラーの相談にのれるのはどんな人で、それがどんなサポートにつながるのかなどを、見ていきたいと思います。