ちくまプリマー新書

数字で振り返る新型コロナと、「グローバル化」という背景
『ニッポンの数字』より「はじめに」冒頭を公開

【人口・社会】【経済】【環境問題】【防衛・安全保障】【AI、そしてロボット】【最新医療】の6分野にわたって、日本の論点を数字で整理する『ニッポンの数字――「危機」と「希望」を考える』より「はじめに」の冒頭を公開します!
 

はじめに

 この国は今、どこにいて、これから、どこに向かおうとしているのか。

 日本、そして日本を取り巻く周囲、の状況は近年、大きく揺らいでいます。

 これが、どのように、どのくらい、変わっていくのか。さまざまな分野で。日本が。日本が。世界が。ヒトが。そこには、多くの「危機」と「希望」があります。

 こうしたことを考えていくために、本書では、その大半を使い、日本の6分野の現状を見ていきます。第1章:人口・社会、第2章:経済、第3章:環境問題、第4章:防衛・安全保障、第5章:AI、そしてロボット、第6章:最新医療、の順にです。その上で、終章で、日本と日本人、世界、ヒト、を取り巻く状況のこれから、について考察していきます。

 本書では、関連する数字を示し、その意味や、歴史的な推移、将来の姿、を明らかにしていきます。ただしそこでは、数字だけをことさらに強調すること、はあまりしません。しかし、表示するどの数字にも、一定以上の意味があります。さらにまた、必要があれば、世界での日本の順位や立ち位置、海外の状況等も提示します。

 2020年1月以降、日本と世界の社会・経済に深刻な影響をもたらしてきた出来事があります。「新型コロナウイルス感染症」(COVID―19。以下、新型コロナ)のパンデミック(世界規模での流行)です。

 そこでは、多くの人がこれまで、歴史上のものだと考えてきた、ペスト(14世紀の欧州各地などで蔓延)やスペインインフルエンザ(スペイン風邪。1918年前後に、世界的に大流行)のような感染症が、現代の社会にも深刻な影響を与えること、が示されました。

 今も続く、新型コロナとその影響、日本や世界の対応など、を調べてみると、この国と世界が抱える「危機」と「希望」が見えてきます。

 たとえば、①危険な感染症のパンデミックが急拡大する現代社会の有り様。②新型コロナの特徴である「後遺症」の恐さ。③ウイルスが、超大国となった中国で最初に発見されたこと、の意味合い。④新たな医療技術の登場、などです。順に紹介しましょう。

 まず①。新型コロナ、日本における感染者数は、23年5月8日時点での累計で3380万2739人。死者の数は、同時点で7万4669人に上っています。日本の総人口(日本人の人口に、国内滞在期間が3か月以上の外国人の数、を加算)は、23年5月1日の確定値で、1億2448万人ほど。単純計算では、日本の総人口の約3・7人に1人が同感染症を罹患したことになります。そして、感染者の約453人に1人が亡くなっています。

 世界では、新型コロナによる死者数の累計は、23年10 月25日時点で697万4473人。感染者の約111人に1人、が命を失っています。

 新型コロナの最初の感染者が発見されたのは、19年12月1日、中国・湖北省武漢(ぶかん/ウーハン)市において。そこからごくわずかの期間で、同感染症が世界中に拡大したのです。

 背景には、「グローバル化」があります。たとえば、貿易額。ジェトロ(JETRO:日本貿易振興機構)によれば、21年のモノ(財)の輸出総額は、世界全体で21兆7534億ドル。20年ほど前の02年には、この数字が約7兆ドルで、以降、ほぼ右肩上がりの傾向が見られます。モノの貿易規模が、20 年弱の間に、3倍超に増えたことになります。

 国際旅行客の数も、増加を続けています。新型コロナが世界中に蔓延する前の19年、この数は14.6億人でした。その20年前の1999年には6.3億人。以降、継続的に増えています。日本でも、同様の傾向が見られます。日本人出国者の数は、80年には391万人でしたが、90年には1100万人。2000年1782万人。新型コロナの感染拡大が始まる前の19年には2008万人、に増えています。こうした数字に代表されるグローバル化の進展が、新型コロナの感染急拡大につながっているのです。



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