そして、相手の話を聞くだけではなく、ぼく自身も、地域についてこう思う、こんなことができたらいいよねと、自分の目標や夢も語るようにしていました。インタビューというより、ある種のカウンセリングでもあり、対話でもあり、おしゃべりでもありました。気になる人に「一緒にお話ししたいです」と連絡するより、「取材させてください」とオファーする方が会ってもらえるはずですよね。ぼくにとってインタビューとは、取材のためではなく、その人と知り合いになるための方便です。記事は、その結果にすぎない。
もしお金が発生するメディアだったら、記事はバズらせなければいけないし、テレビ局の記者時代のように、その場限りの関係で終わっていたかもしれません。でも、ぼくのメディアは、ぼくが自由にコントロールできました。インタビュー中に雑談したっていいし、お互いに悩みをぶつけたっていい。そのような豊かな時間を経過すると、取材させてもらった人とすっかり打ち解けていて、いつの間にか友人になってしまうわけです。テレビの記者時代にも、何百人という人たちにインタビューしていました。けれど、よさげなコメントが取れればそれ以上突っ込むこともなく、頂いた名刺に電話して飲みに誘うこともない。それらはどれも「インタビューのためのインタビュー」でした。一方で、「tetote onahama」は全然違いました。わかりやすく説明すると、一五人にインタビューしたら、そのままその一五人が新しい友人になり、その一五人それぞれの間にも個別に交友関係が生まれているという感じなのです。一緒にイベントをするようになったり、自分たちのスペースを訪問しあったり、リアルな関係が次々に生まれました。その時には気づきませんでしたが、先ほど紹介した影山さんの言葉にもあるように、ローカルメディアには、既存のコミュニティにとらわれない、新たなコミュニティを作る機能があると気づきました。
これから「場」をつくろうとする人は、メディアのこともぜひ考えてみてください。本業にしなくてもいいんです。ぼくのように「趣味」でもいいし、なんなら、すでにあるメディアのお手伝いでもいい。もっといえば、役割を自覚しさえすれば、別に文章なんて書かなくてもいい。必要なのは、人と出会い、語り合い、リアルな人間関係を拡張する「場を作ること」です。楽しみながら続けた先にはきっと、新しい友人や、新しい居場所が生まれてくるはずです。
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…「オフラインの場」オルタナティブスペースづくりの裏話をはじめ、続きは『地方を生きる』でどうぞ。仕事、暮らし、苦労話まで、すべて洗いざらいお伝えします。