私が「いいね!」をつけたいワードセンス最強TOP2は、
『吾輩は猫である』と『人間失格』です。
これほどインパクトのある、内容にぴったりの、絶対忘れないで皆が使い続けているタイトルを生み出したワードセンスは天才的です。膨大な量の「いいね!」を集めたタイトルです。これがワードセンスです。
現代は、「いいね!」を求め合う時代。ちょっとしたコメントにも「いいね!」がつきます。「いいね!」が集まれば、気分が上がります。
逆にズレたことを言ってしまうと、👎が押されてしまいます。「いいね!」の数など気にしたくなくても、どうしても気になってしまいます。
インターネットの時代になって、一番変わったものは、言葉のやりとりがぼうだいになったことではないでしょうか。
手紙の時代は、それほど長々と書くことも読むこともなかったはずです。でも今はSNSや動画もありますから、文字を打ったり、音声を発したりしない日はないくらい、大量の言葉が行き交っています。
オンラインでの仕事も増え、言葉でしっかりやりとりをしてビジネスを進める場面も出てきました。
すべての場面で大切なのが言葉の選び方です。その場にぴったりした言葉を選ぶことによって「ああ、なるほど」という快感が当事者の間で共有されます。
「そう、そう、それ」とか「よくその言葉、思いついたね」というピッタリの言葉が出てくると、一気に距離が縮まり、場が温まります。言葉が人間関係を近づける燃料となるわけです。
私は大学生に授業で近況報告をしてもらう時、「先週○○○した××です」と話すよう求めています。○○○のところにいい言葉、面白い言葉をあてはめるのです。すると学生たちの間でも、気がきいた言葉を言える人やそれをほめられる人が評価されるようになってきました。
今は、ルッキズム問題もあり、言葉のセンスが評価の重要な基準になりつつあります。言葉のキレの良さ、言葉のセレクトで評価を受けるのが、今のネット社会では当たり前になってきたのです。
短い言葉で面白いことを言ってお互いに盛り上がったり、サービスしあったりするという、「気の利いたワード」花盛りの時代になってきていると感じています。
そうした言葉を選ぶセンスが「ワードセンス」です。「ワードセンス」は「語彙力」とちょっと似ていますが、「ワードセンス」のほうがよりライブ感があり、現代の空気を吸って出てくる〝生きのいい〞感覚があります。
「ワードセンス」に優れた人が一人いるだけで、場が冷えずに盛り上がって、うまく流れていきます。「ワードセンス」さえあれば、どこに行っても重宝され、一目置かれる存在になるでしょう。
今までの世界では「ワードセンス」はそこまで必要とされませんでした。仲のいい人と、ただ雑談しているだけでよかったのですが、インターネットで世界中とつながると、全然知らない人とも言葉でのやりとりが必要になってきます。
すると、何を言うのかという見解やものの考え方も大事ですが、どんな言葉をつかっているのかのほうが重要になってきたと言えます。少しジョークも交えながら、上手な言葉のつかい方ができると、「いいね!」がたくさん押されるのです。
もちろん手紙でやりとりしていた時代でも、五・七・五・七・七の和歌を贈るといった行為は「ワードセンス」が問われる極みと言えますが、それをやる人はある程度限られていて、機会もそれほど頻繁ではありませんでした。
しかし今は一般の人が毎日10通、20通のメールを打つのはふつうですし、インスタやフェイスブックに反応したり、コメントを書いたりするのもあたりまえになっています。言葉をつかう頻度が圧倒的に高まっていて、どんな言葉を選ぶかというセンスが重要になっているわけです。
私が教えている英語のクラスで、海外のSNSに英語でコメントをつけて反応がくるかどうかを試したことがあります。
すると自分が日本人であることをアピールしながら、相手をほめつつ、上手に言葉を選んだ人は、外国の方から即座に返信がくるということがありました。
ありきたりの言葉では返信がもらえなかったと思いますので、やはり言葉を選ぶセンスが大事だとわかります。今や全世界的に「ワードセンス」が試される時代になってきたのです。
しかしこれまで「語彙力」について説いた人(私もその一人ですが)はたくさんいましたが、現代的な「ワードセンス」の重要性に注目した人はあまりいませんでした。
「ワードセンス」が必要とされる時代になってきたにもかかわらず、評価が足りない
と思うのです。
「ワードセンス」に光をあてて、もっと磨こうというのが、私の意図するところです。
本書では、「ワードセンス」を磨くための心構えや、人と差をつける「ワードセンス」の小技、さらに「ワードセンス」を鍛える練習問題ものせています。いわば「ワードセンス」の集大成ともいうべき内容です。
この本を活用して、あなたも「ワードセンスがいいね」と言われる達人をめざして
がんばってください。