佐藤文香のネオ歳時記

第15回「確定申告」「ドローン」【春】

「ダークマター」「ビットコイン」「線上降水帯」etc.ぞくぞく新語が現れる現代、俳句にしようとも「これって季語? いつの?」と悩んで夜も眠れぬ諸姉諸兄のためにひとりの俳人がいま立ち上がる!! 佐藤文香が生まれたてほやほや、あるいは新たな意味が付与された言葉たちを作例とともにやさしく歳時記へとガイドします。

【季節・春 分類・生活】
確定申告
傍題 申告書 青色申告 白色申告 e-Tax

 今年も確定申告の季節がやってきてしまった、と思うくらいは、私にとってはすでに季節感のある言葉だ。嫌だからと言って季語にしないというのは言葉に対して不平等なので、嫌いな季語として認定したい。夏の季語で油虫(ゴキブリ)があるが、それくらい嫌だ。と言っても、どなた様もご存じのとおり、昨年1年間の収支を提出するだけのことで、どこかひとつの会社に勤めている人は、ほかに所得がなければ基本的に申告する必要はないし、毎月ちゃんと収支を書いていれば、そんなに手間ではないはずだ。
 私は新年になったころからそわそわしだすのだが、すぐにはできない事情もある。1月に入ってから送られてくる源泉徴収票も多いからだ。フリーランスで仕事をやっているといろいろな会社から仕事が来るので、源泉徴収票の枚数が多くなる。いや、稼いでいるわけでは全然なくて、俳句関係の小さい依頼だと、1回は3000円だったりするが、それもせっせと申告せねばならないのである。申告は課税のためだが、私の場合はこれをしないと源泉税が返ってこず、そのお金がないことには、年金が払えない。
 毎年3月15日が〆切なので、私は3月に入ってからがんばることにしている。申告が終わると、今年こそはちゃんとしようと思うのに、一瞬にして挫折するのが常だ。原稿〆切から1ヶ月後くらいに文章が掲載され、そのあとさらに1ヶ月くらいしてから支払いがあったり、講演だと現地で交通費込みの額を現金で手渡されたりするので、何が何だかわからなくなってしまうためである。しかし、ちゃんとやれている人もいるんだから、できないのには理由があるのだろう。
 最近は税務署の行列に並ばなくても、インターネットの画面上で申告書をつくることができ、それを郵送すればいいのでストレスは少ない(e-Taxでできる人はもっとラクなのかもしれない)。申告書を送りに郵便局へ行った帰りは、夕方のぬるい春の空気に包まれる。もうすぐ桜の時期だ。

〈例句〉
確定申告終りし友を恨む期間  佐藤文香
申告書出してパフェ食ふ部屋着のまま 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


















 

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