みんな”普通

第4回 「好きなこと」は必要だ

きみは好きなことがある? 好きなことがあるというのはとても大切なこと。人に認められなくても、自分が好きだ、と思うものを1つでもいいから見つけて欲しい。

「好きなことがわからない」大学生ぐらいでこんなことをいう子が少なくない。仲のいい友達と遊んだり、サークルや飲み会なんかに参加したりして一見すると充実してそうなものだけど、好きなことがわからないことが悩みになっている。

好きなことなんて気長に探せばいいじゃんなんておもってしまうけど、就活が始まるぐらいのタイミングでこれが大きな問題になる。好きなことがわからないがために、どうしたらいいのか悩んでしまうのだ。

好きなことがわからないという大学生にありがちなのが、親になんでも決めてもらったパターンだ。大学を選んだのも親、高校での部活やアルバイトを決めたのも親、中学校で付き合う友人や、ファッションなども親が決めて、小学生のころは食べるものも親が決める。

 

親が決めることの全てが悪いとはおもわない。ただ、子どもの好きなものを否定して、親が好きなものを押し付けている場合は最悪だとおもう。よくありがちなのはスーパーのお菓子売り場での光景だ。

ちいさな子どもがお菓子を選ぶ。それを親が否定して、こっちにしなさいと親にとって都合のいいお菓子を与える。その調子で小学校から大学生まで子どもの好きなものを否定して、親にとって都合のいいものを与えていたら、好きなことがわからない大人になって当然だ。

大人だって自分の好きなものをディスられて、まったく興味のないものを押し付けられたらうんざりする。宗教の勧誘が嫌われる理由がこれだ。

子どもにたいする否定と押し付けは、失敗する経験を奪うことにもつながる。親は子どもを失敗から守ろうとしているのだろうけど、好きなものがわからないという大学生に限って、失敗を人三倍恐れて挑戦する気力も弱い。

それまでなんでも口出ししていた親も就活になると途端に口を出さなくなり、好きなことをしなさいなんて言いだしたりする。不思議なことに就活には口出しをしないけど、転職や退職にはまた口を出したり、結婚相手のことや育児のことにはまた口を出したりする。

いままで親に決めてもらって失敗も経験していない大学生が、いきなり人生の岐路に立たされて、悩まないわけがない。就活で失敗することを極端に恐れて動けなくなってしまう。ちいさなときから好きなことを否定されていたら、なにが好きなのかわかるわけもない。

だから好きなことがあるというのは、とても大切なことだ。それを親に否定されようが、友達に笑われようが、社会からバカにされようが、法律に抵触しないかぎり好きなことというのは死守した方がいい。キミが好きならそれでいいんだ。

 

好きなことがある子はひとまず安心だ、親に何でも決められたパターンで好きなことがわからないという子よりも10年はリードしているとおもっていい。親になんでも決められて好きなことがわからない子は、小学生をやり直すようにこれから10年かけて好きなものを見つけてくれ。10年たってもアラサーだ、まだ間にあう。

でもだからといって、好きなことと仕事を無理矢理つなげようとしなくてもいい。好きなことが続くとは限らないからだ。どんなに好きな仕事だって、月給手取り15万円で長時間労働、サービス残業万歳だと継続は困難だ。好きなことを仕事にするなら、労働条件がめちゃくちゃ重要になる。

そんなことをいいつつも、若いうちは好きなことをしようが、好きじゃないことをしようが基本的に給料は低いので、だったら好きなことをした方がいいという考えでぼくは写真の世界に飛び込んだ。

若いうちは体力もあるし、ダメだとおもったら方向転換も早いうちにきく。大人が聞いたら「そんなの無理だよ」といってしまいそうな夢ほど、若いうちに目指した方がいい。

18歳で夢を追い始めるのと、30歳で夢を追い始めるのでは質が違う。28歳で方向転換をするのと、40歳で方向転換をすることだって違う。だから好きなことがあって、それを追いかけたいなら若ければ若いほどいい。

でも高校の先生を困らせるのがこの夢を追ってしまうパターンだ。大学に行くわけでも、専門学校に行くわけでもなく、就職するわけでもない進路未決定者になり、それが高校の実績に反映されるため嫌う。

卒業した生徒の進路状況を見て、中学生が高校選びの参考にするから、夢を追う生徒は先生からするととても困るのだ。学校というのは生徒がお客さんにもなり、生徒が商品にもなる不思議な場所だ。

 

好きなことと仕事は結びつけなくていいのだけど、仕事をしても好きなことを継続させることは大切だ。好きなことをずっと継続させるのもいいし、新しく好きなことを始めることもいい。

仕事とは別に好きなことがないと、人生が仕事だけになってしまう。好きなことを仕事にした人がワーカホリックに陥ることもある。好きなことはとても大切なことだし、好きなことがないと悩みになってしまうのだ。

好きなことは、趣味やライフワークともいいかえることができる。仕事は好きなことと別でも、一緒でもなんでもいいのだ。仕事は生活のために必要で、好きなことはたのしむために必要だ。