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生き抜くための進化、その道は無限にある

木が草になったって本当?

人気植物学者・稲垣先生の元気が出る植物の話。植物たちの進化を追いかけると、「強さ」の基準や勝負の方法は、無限にあることが見えてきます。新刊『植物たちのフシギすぎる進化』の「はじめに」を公開します。

 

第1話 スピード勝負を制したのは誰だ?

スピード勝負の攻撃方法

 「さぁ、残り時間はもうほとんどありません。残り時間でゴールを決めることができるでしょうか!」

 サッカーの試合時間は決まっています。そのため、試合終盤になって残り時間が少なくなってくると、スリルが増して、緊張感は一気に高まります。
 サッカーでは、さまざまな攻撃方法があります。
 たとえば、攻撃の態勢を整えてから、じっくりと攻めていく方法と、大きく前線にボールを蹴り出して、足の速い選手が一気に攻撃をする方法があります。
 さて、残り時間が少ないこの場面では、どちらの攻撃方法が効果的でしょうか?

 

 フォーメーションを整える方法は、確実で迫力がありますが、選手全員が連携しながら動かなければならないので、時間が掛かります。
 一方、前に大きくボールを蹴る速攻は、確実とは言えません。しかし、圧倒的にスピードで勝ります。短い時間で一発逆転を狙うとすれば、とにかく前に大きく蹴り出した方が良いのです。

 さて、恐竜の時代の話です。
 そんなサッカーの速攻と同じ作戦で勝ち抜く方法を見出いだし、進化した植物があります。
 それが、「単子葉植物」と呼ばれる植物です。
 皆さんは、「単子葉植物」という言葉を聞いたことがありますか?
 単子葉植物の葉っぱには、特徴があります。
 単子葉植物の葉っぱを見てみると、縦に線が通っています。この線は、水や養分を通す葉脈です。
 単子葉植物の葉っぱは、大きくボールを前に蹴り出すように、葉脈がまっすぐ通っています。これを平行脈と言います。とにかく葉っぱの先端まで早く水や養分を送るというしくみになっているのです。

 

 それでは、単子葉植物以外の植物はどうでしょうか。
 単子葉植物でない植物の葉っぱは、縦に一本太い葉脈が通っていて、そこから葉脈が枝分かれしています。これを網状脈といいます。このほうが、葉っぱのすみずみまで確実に水や養分を送ることができるのです。
 しかし、この方法は、サッカーでフォーメーションを整えるのと同じように時間が掛かります。
 そこで、単子葉植物は、とにかくスピード重視で葉脈を縦に通したのです。

 

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