ちくま文庫

全部「五万点」な傑作選
伊坂幸太郎編『小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇/オーシャンラズベリー篇』刊行記念インタビュー

「小説の凄さ」を知りたいけれど、一体何から読めばいいのかわからない。物語は好きだけれども、小説以外に漫画や映画、アニメ、舞台、数多のエンタメ作品はある――。そんな人にこそ届けたい、作家・伊坂幸太郎が究極の短編だけを選んだ二冊のアンソロジー『小説の惑星』。刊行までの舞台裏を伊坂さんにうかがいました。

 

あくまで自分にとっての「ベスト」

――書き下ろしのまえがき、あとがき共にボリュームがありますから、ぜひ楽しんで欲しいですね。

伊坂 「自分で小説を書く必要はないから楽でいいな」と思っていたんですけど、意外とたくさん書いちゃいましたね(笑)。我ながら、かなり熱い思いを込めて書いたので、読んでほしいです。ただ、僕の書いた解説を読むと「全部、大絶賛しているじゃないか!」と思われるかもしれないんですが、どれも百点満点で五万点のやつなので仕方がないんですよね(笑)。今回、最強の軍団をそろえた、とまえがきでえらそうに書いてしまいましたけれど、「これもすごいぞ」「これが入っていないぞ」という意見があるとは思うんです。なので、もし、「だとすると伊坂、おまえ、これも気に入るはずだぞ」という小説があったら教えてほしい、というか、最強軍団のメンバーを増やしていきたい(笑)。あと、これは今から勝手に心配になっているんですが、収録作はどれも全部大事な、大好きな作品なので、万が一、誰かに悪く言われたら、悲しくなりそうな予感があるんですよ。自分の小説に文句を言われるのは、つらいとはいえ、ある程度覚悟はできているものの、今回のこのアンソロジーの作品については悪く言われたくないなあ、と思わずにはいられないです。装画をお借りしたたむらしげるさんの作品も含めて、本当に大好きなものばかりですから。

──別のテーマのアンソロジーが読んでみたい、という声もさっそく寄せられていますが……

伊坂 超お気に入りの短編小説というのはかなり挙げたのでなかなか難しいんですけど、分量やテイストの制限がなければ入れたかった作品が――特にミステリーではいくつかありますし、もっと「暗い」とかもっと「怖い」とか、「読後感がそんなに良くない篇」のようなものは、ありえるのかも(笑)。

 

 

(聞き手:ちくま文庫編集部 砂金有美)