絶叫委員会

【第147回】最近の見出詩

PR誌「ちくま」12月号より穂村弘さんの連載を掲載します。

 インターネット上のニュースサイトを眺めていると、見出しに「?」と思うことがある。新聞などの見出しとは明らかに機能というか意味合いが違っているようだ。新聞の見出しは最低限それを見れば記事の概要が理解できるように書かれているが、ニュースサイトのそれはとにかく読み手の興味を引くことが重要らしい。単にまとめ方の精度が低いケースも含めて、結果的にどこか謎めいたものになっていることがある。それを私は勝手に見出詩と呼んでいる。以前も幾つか紹介したが、例えばこんな感じだ。

 ポイントに亀が挟まり列車遅延

 どうしてそんなことになったのか。運命的な「ポイント」に「亀」ってところがいい。裏返ると「メカ」でもある。「列車」は「遅延」したが、「亀」は甲羅に守られて無事だったと思いたい。

 カンガルーに豊胸バッグ壊される
 ヒトラーの兄実は弟だった
 水筒に少女の舌詰まり抜けず
 体からバナナ臭は危険のサイン

 いずれもなんとなく記事の内容は想像がつくのだが、それでも別次元の謎が残るところが面白い。リズムが五七五の俳句形式になっているものもある。見出詩には最初から詩歌として書かれた作品とはまた違った魅力がある。偶然が生み出した詩の味わいだ。
 ここ一年ほどの間に発見した見出詩を挙げてみる。

 騒音の原因ハリネズミの交尾

 金属的な「騒音」だろうか。うまく行わないとお互いに痛そうだ。

 アザラシの糞からUSBメモリー

 手紙を封じて流す海流瓶というものがあるが、より運命的な偶然性を感じる。「USBメモリー」の中身が気にかかる。

 夜絶対ぶつかる世界一黒い椅子

「夜絶対ぶつかる」ってところに詩がある。

 足指を失うハト人間の髪が原因?

 意味不明で怖い。どうしてそういうことになるのだろう。記事を読まずにはいられない。

 赤ちゃんの性別発表航空機墜落

 因果関係がわからない。ものすごい詩にも見えるのが不思議だ。

関連書籍

こちらあみ子

穂村 弘

絶叫委員会 (ちくま文庫)

筑摩書房

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