ちくまプリマー新書

日本がダメでも自分がよければそれでいい…のか? データが明らかにする若者世代の低い「自己効力感」
『「日本」ってどんな国?』より本文を一部公開

好評発売中の本田由紀『「日本」ってどんな国?』(ちくまプリマー新書)は、「家族」「ジェンダー」「学校」「友人」「経済・仕事」「政治・社会運動」といった日本社会のさまざまな面を世界各国とデータで徹底比較する一冊。「あたりまえ」だと思い込んでいたことが、実は「変」だったことに気付かされます。この国のグダグダな現状に慣れ切ってしまった私たちに「幸せ?」と問いかける第七章より、本文の一部を公開します!

鬱屈の社会的背景

 この鬱屈はどこからくるものなのでしょうか。もう少しデータを見てみましょう。2016年に国際若者基金(International Youth Foundation, IYF)と戦略的国際研究センター(Center for Strategic and International Studies, CSIS)が、世界30カ国の16〜24歳の若者7600人を対象に実施した調査結果の中で、2つの項目に関する結果を図7-2・図7-3に示しました。

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 図7-2は「ストレスが大きすぎる」という項目に対して肯定する割合を示しており、日本はヨルダンと並んで2位となっています。このストレスの中身まではわかりませんが、推測するならば、学校や会社における強い締めつけや忙しさ、常に成果を求められる圧迫感、一歩間違えばそしられ罵られるかもしれない不安などでしょうか。

 もう一つの図7-3は、「親世代より生活水準は上がるだろう」という項目を肯定する回答を示していますが、ご覧の通り日本は最下位です。1990年代以降、長く続く経済の低迷や労働市場の不安定化の中で、若い人たちは親世代が達成していたような生活水準―かなり安定した仕事や賃金、家族や持家や自動車を所有すること―を、自分たちが同様にできるかどうか、ましてや親たちよりも上の生活ができるかどうかに対して、非常に暗い見通しをもっています。

 これらの図に見られるような、ストレスや生活水準に関する日本の若者の特徴的な反応も、彼らが日本という国で生きているからこそ表れているものです。彼らをそうした状態に追い込んでいる、この日本という国のあり方について、看過したり楽観したりすることは、とうていできません。

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