たとえば、行きたい大学に入るために「毎日、二時間勉強する」という目標を立てて、日々勉強している高校生がいるとします。日々勉強しているといっても、何となく体の調子が悪くて勉強をしたくない日があるかもしれません。あるいは、友だちに遊びに誘われているので、今日くらいは勉強をしなくてもよいと考えることもあるでしょう。大好きなドラマの続きが気になって、勉強どころではない日もあるに違いありません。
このようにさまざまな誘惑があるので、年がら年中、やる気に満ち溢れ、目標に向かって進む人はそうそういないものです。誰だって、やる気が出なくて、今日は何にもしたくないなぁ〜と思っている日があります。私にもたくさんあります(!)。
それでも、やる気に満ち溢れて、精力的にがんばっているように見える人はいます。そういった人は、やる気の程度がもともと違うのではなく、やる気が出ない時に、それをコントロールするのがちょっぴり上手なんだと私は思っています。
勉強を進めていくにあたって、内容が難しかったり、退屈であったり、誘惑が存在したりしてどうしてもやる気が出ないことはあるでしょう。そうしたときに、少しでも前に進むためにちょっとした工夫ができるかどうかが、やる気を継続するカギになります。
先に説明した、マシュマロを食べずに我慢できるコツである、誘惑を目の前から遠ざけること、これも工夫のひとつです。
冒頭の例でいえば、ゲームが誘惑となっている人は、ゲームが終わったら決まった場所に片付けて、勉強をしている時は、ゲーム機が目に入ってこないようにしましょう。
漫画が誘惑となっている人は、漫画は本棚の後ろの列に置き、手前の列には真面目な本を並べましょう。
スマホが誘惑となっている人は、スマホの電源を切って、かばんの奥底にしまっておきましょう。
こうした原始的な方法が、実は抜群の効果を持つのです。みなさんも試してみてください。
このようなやる気をコントロールするコツのことを、心理学の学術用語では、「動機づけ調整方略」といいます。「方略」というのは、方法とか作戦という意味になります。
くり返していいますが、日常でやる気が出なかったり、やる気が低下したりすることはよくあります。そのようなときには、さまざまな方略を使って、自身でやる気を起こしたり維持したりしなければいけません。これが「動機づけ調整方略」です。心理学では、どのような動機づけ調整方略がより効果的であるのかが研究されています。
次からは、心理学の研究で明らかになった、やる気をコントロールする動機づけ調整方略の具体的な中身を紹介していきます。