佐藤文香のネオ歳時記

第5回「マキアート」「そうだ 京都、行こう。」【秋】

お待ちかね!(かどうかはわからぬが)「佐藤文香のネオ歳時記」がついにスタート! 「ダークマター」「ビットコイン」「線上降水帯」etc.ぞくぞく新語が現れる現代、俳句にしようとも「これって季語? いつの?」と悩んで夜も眠れぬ諸姉諸兄のためにひとりの俳人がいま立ち上がる!! 佐藤文香が生まれたてほやほや、あるいは新たな意味が付与された言葉たちを作例とともにやさしく歳時記へとガイドします。

【季節・秋 分類・生活(飲食)】
マキアート
傍題 キャラメルマキアート

 以前から「フラペチーノ」は夏、「マキアート」は秋っぽい気がすると思っていたが、調べてみるとスターバックス2014年の秋の新作に「ビターキャラメルマキアート」というのがあった(これ、7音5音なので、あと5音で俳句になる。「失恋やビターキャラメルマキアート」みたいな)。しかし、私は前からスタバのキャラメルマキアートには一言申したいと思っていた。あれは、キャラメル味のカフェラテである。カフェラテ、カプチーノ、マキアートは、みなエスプレッソドリンクなのだが、ふつうマキアートというのはエスプレッソマキアートで、エスプレッソと同量程度の少ないフォームド(泡)ミルクしか入れないもの。小さいデミタスカップでくいっと飲むのがいいのです。
 まぁしかし、このたびはネオ季語の取材だ、と思ってスターバックスに入り、ふだんは頼まないキャラメルマキアートを頼んだところ、店員さんが間違えてキャラメルフラペチーノをつくってくれてしまいました。それじゃ夏のネオ季語じゃないか! と心の中でツッコミつつ、「すみません、マキアートをお願いしたかと思うのですが」と言ったら、「ほんとですね、すみません!」と、つくったばかりのフラペチーノをじゃばじゃばと廃棄。も、もったいない……。つくりなおしてもらったキャラメルマキアートは、やはり、甘いカフェラテだなぁという感想。2ショットくらいエスプレッソを追加するといいかもしれない。
 そこで、それなら本物のマキアートも飲まねばと、向かったのは新宿Paul Bassett。以前同じカフェでバイトしていた友達がバリスタとして働いていたこともあり、美味しいエスプレッソドリンクが飲みたいときはここに来る。パッと広がる苦味と、ミルクのほのかな甘み。私はエスプレッソは砂糖を入れて飲むが、マキアートは苦いままで飲むことにしている。とはいえマキアートは量が少ないのですぐに飲みきってしまい、2杯目はフラットホワイトを頼んだ。フラットホワイトはクリーミーなスチームミルクでつくったカフェラテの、上の泡がないバージョンといえばよいだろうか。5月にエスプレッソ先進国のオーストラリアに行ったとき、やたら飲んだ。エスプレッソドリンクに季感を与えるとすれば、カプチーノは春、フラットホワイトは夏、マキアートは秋ということになるだろう。カフェラテは通年感が強い。
 macchiatoはイタリア語で「染みのついた」という意味だが、日本語で想起されるのは牧とか巻きとか薪とか、それにアート。語感的にもなんだか秋のかんじがある気がするのは私だけだろうか。
 

〈例句〉
杣山の空に星湧くマキアート  佐藤文香
マキアートせつなき舌をめぐりけり