昨日、なに読んだ?

File75.今も続く“好き”と出会った本

あんびるやすこ作・絵『なんでも魔女商会』シリーズ、くぼしまりお・作、佐竹美保・絵『ブンダバー』シリーズ

紙の単行本、文庫本、デジタルのスマホ、タブレット、電子ブックリーダー…かたちは変われど、ひとはいつだって本を読む。気になるあのひとはどんな本を読んでいる? 各界で活躍されている方たちが読みたてホヤホヤをそっと教えてくれるリレー書評。今回は、タレントの長濱ねるさんに、読書のよろこびを、今にまで続く“好き”を教えてくれた児童書の名作をご紹介いただきました。

 私は図書館が好きです。物心ついた頃から家の近くに図書館がありました。小学生の頃引っ越した先でも、なぜだか近くに図書館がありました。
 あの頃の私にとって、本はどこか知らない場所へ連れて行ってくれる魔法の切符。毎日、司書の先生に「日が暮れたからそろそろ帰りなさい」と言われるまで、夢中でいろんな世界を冒険していました。

 読書が好きになったきっかけは、ロアルド・ダール作の『マチルダは小さな大天才』(クェンティン・ブレイク・絵、宮下嶺夫・訳、評論社)。“マチルダは4歳と3カ月で村の図書館の本を全て読んでしまいました”という一文に感化され、小学1年生の私は入学初日に、図書館の本を読み尽くすという壮大な目標を掲げました。本棚の端にあった、ファーブル昆虫記、シートン動物記、そして偉人たちの伝記から、ちまちまと読み進め、6年間で主な児童書はほとんど読んだ気がします。挙げればキリがないですが、特に好きだった2つのシリーズを紹介させてください。

 一つ目は、あんびるやすこさん作・絵『なんでも魔女商会』シリーズ(1~28巻、岩崎書店)。困っている動物たちをお裁縫魔女のシルクが、魔法を使わず裁縫でお助けをするという物語。この本はもう私のバイブルと言っても過言ではありません。シルクが服のリフォームをするために、スケッチブックにデザイン画を描くのですが、その挿絵がもうあまりに可愛くてですね、小学生の私をときめかせ、服に興味を持たせるには十分すぎるものでした。その挿絵には、デッサンの横に本物の布切れが貼り付けられていて、毎度違う素材と柄の布切れに心が躍り、見たいような、見てしまったらもったいないような、いつも頁をめくるのを躊躇っていました。大人になっても、そのときに感じた“好き”という感覚は自分のルーツとして心に留まっていて、旅行先のロンドン V&Aミュージアムで、アンティークドレスのデザイン画本を手にしたとき、頁の端に布切れが並んで貼られているのを見て、なんでも魔女商会を大切に読み進めていたあの時の気持ちが、時を超えてリンクした気がしました。今も昔も好きなものが変わっていない。その繋がりにほっと安心したのを覚えています。

 そしてもう一つ、くぼしまりおさん作『ブンダバー』シリーズ(佐竹美保・絵、全10巻、ポプラ社)。黒猫ブンダバーと古道具屋のおしじさん、そして町の人との物語です。ホルムという小さな港町が舞台で、私はそのホルムという架空の町に憧れ、大好きでした。自転車で海まで駆け降りる描写があったり、街の様々な人々と交流したり、私もその世界にワープしてブンダバーと一緒に暮らしているような、そんな感覚でした。ブンダバーを読んでいる時は特に、意識が本の中に完全に飛んでしまっていて、誰かに話しかけられるか、17時のチャイムにハッとし顔を上げた時の「あれ? ここどこだっけ……?」感がたまらなく癖になる心地よさでした。ああ、これぞ読書体験というような。世界中の知らない町に行ってみたい!という自分の根底にある漠然とした欲求はこの本との出会いからきていると確信しています。

 ちなみに、この2つのシリーズは2年ほど前に“大人買い”をし、いつでも読めるよう近くに置いています。幼い頃に出会った児童書は、間違いなく今の自分を形成していて、本を開くと一瞬であの頃に連れて行ってくれる私の道標です。ふとした時に手に取り、いつかのときめきを確かめ、今日を生きる魔法のエッセンスを心に垂らしてもらう。そんなふうに向き合っています。
 あなたの大切な一冊は何ですか?

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