昨日、なに読んだ?という質問に真っ向から答えるとすると、小川洋子さんの新刊小説のゲラを読み(タイトルはまだ言えない)、キューライスさんの漫画『夜の訪問者』のゲラを見直し……といった感じで、まだ紙の束の状態のものばかり読んでいます。みなさんにおすすめできる段階ではないので、もうすでに出来上がった本たちの中から、個人の趣味として2冊あげたいと思います。
まずは福永信『星座から見た地球』(新潮社)。わたしはこの本の隅々まで大好きで、帯の惹句(福永さんが書いた)まで愛しい気持ちが継続しています。自分がブックデザインを担当した本は、出来上がってしまうと見返すことが少ないのですが(いつも今作っている本が、いちばん可愛く思えているのです)、32名の方に装画を描いてもらったせいなのか、なんだかこの一冊は思い出が多く、たまに手にとります。あらすじは到底説明できないので、その美しい惹句をお届けします。
〈この小さい光があれば、
物語は消えてしまわない。
はるか彼方、地球のどこかで暮らす子供たち。
時間は不意に巻き戻る。
忘れがたい世界へといざなう、
野心あふれる長編小説。〉
読みたくなってきましたでしょうか!
2冊目は岸本佐知子編訳『コドモノセカイ』(河出書房新社)。こちらは海外文学の中から、岸本さん選りすぐりの変な〈子供〉文学を集めたもの。表紙のデザインには身近にいる本物の子供2人から、宝物を貸していただいて、撮影しました。子供の宝物風のものを集めることもできるけれど、本物の力には勝てないと思ったからです。
自分はなんだかずっと子供のままのような気がしていて、でも一通りの大人の了見も持ち合わせていて、偽物の子供でいるような感じなのですが、今回の2冊を読んでいると、それでいいように思えてきます。子供にはわからない子供の気持ちがわかるから。長い時間をかけて揺られてきた子供の成分の、上澄みのようなところ、それが結晶化したように思える2冊です。