昨日、なに読んだ?

File84.熟成された子供たちへおすすめする本

福永信『星座から見た地球』/岸本佐知子 編訳『コドモノセカイ』

紙の単行本、文庫本、デジタルのスマホ、タブレット、電子ブックリーダー…かたちは変われど、ひとはいつだって本を読む。気になるあのひとはどんな本を読んでいる? 各界で活躍されている方たちが読みたてホヤホヤをそっと教えてくれるリレー書評。今回ご登場いただくのは、数多くの名作の装丁を手掛けてきたブックデザイナー、名久井直子さんです!

 昨日、なに読んだ?という質問に真っ向から答えるとすると、小川洋子さんの新刊小説のゲラを読み(タイトルはまだ言えない)、キューライスさんの漫画『夜の訪問者』のゲラを見直し……といった感じで、まだ紙の束の状態のものばかり読んでいます。みなさんにおすすめできる段階ではないので、もうすでに出来上がった本たちの中から、個人の趣味として2冊あげたいと思います。

 まずは福永信『星座から見た地球』(新潮社)。わたしはこの本の隅々まで大好きで、帯の惹句(福永さんが書いた)まで愛しい気持ちが継続しています。自分がブックデザインを担当した本は、出来上がってしまうと見返すことが少ないのですが(いつも今作っている本が、いちばん可愛く思えているのです)、32名の方に装画を描いてもらったせいなのか、なんだかこの一冊は思い出が多く、たまに手にとります。あらすじは到底説明できないので、その美しい惹句をお届けします。

  〈この小さい光があれば、

  物語は消えてしまわない。

  はるか彼方、地球のどこかで暮らす子供たち。

  時間は不意に巻き戻る。

  忘れがたい世界へといざなう、

  野心あふれる長編小説。〉

 読みたくなってきましたでしょうか!

 2冊目は岸本佐知子編訳『コドモノセカイ』(河出書房新社)。こちらは海外文学の中から、岸本さん選りすぐりの変な〈子供〉文学を集めたもの。表紙のデザインには身近にいる本物の子供2人から、宝物を貸していただいて、撮影しました。子供の宝物風のものを集めることもできるけれど、本物の力には勝てないと思ったからです。

 自分はなんだかずっと子供のままのような気がしていて、でも一通りの大人の了見も持ち合わせていて、偽物の子供でいるような感じなのですが、今回の2冊を読んでいると、それでいいように思えてきます。子供にはわからない子供の気持ちがわかるから。長い時間をかけて揺られてきた子供の成分の、上澄みのようなところ、それが結晶化したように思える2冊です。