インターネットのニュースを眺めていたら、「世界最高齢のクモ死ぬ」という見出しを発見した。興味を引かれて記事を読んでみた。
オーストラリア西部ウィートベルトで、世界最高齢として知られる雌のトタテグモ「ナンバー16」が死んだ。同地の研究チームが30日に明らかにした。年齢は43歳で、死因は老衰ではなくハチに刺されたためという。
【シドニーAFP=時事】
うーん、と思う。人間ならともかくそのクモが「43歳」で、しかも「世界最高齢」だとどうしてわかるのか。全てのクモに戸籍があるとでもいうのか。おまけに死因が「ハチに刺されたため」とは。なんだか、いろいろ謎めいている。そのくせ、全世界に発信されるニュースとしてのバリューは甚だ怪しい。この記事は、どこの誰に向かって何を伝えようとしているのだろう。
と考えている時、閃くものがあった。もしかしたら、これはニュース記事に見せかけた一種の暗号文ではないだろうか。「雌のトタテグモ『ナンバー16』」とは、たぶん世界的に知られた女スパイのコードネームだと思う。引退後は身を隠して余生を静かに送っていた。そんな彼女が敵対する秘密結社「ハチ」に暗殺されたのだ。
一見ささやかなニュースは業界を震撼させたに違いない。「ハチ」への復讐を誓って、闇の中で目を光らせている「ナンバー17」や「ナンバー18」の姿が心に浮かぶ。背後には「クモ」対「ハチ」の長い戦いの歴史がある。
そのように推理できたのも、普段から『ゴルゴ13』を愛読しているおかげだ。この世界的スナイパーもまた、外部との秘密連絡に新聞の広告を利用しているのである。
特にポピュラーなのは、アトランタにあるアメリカ連邦刑務所に服役している終身犯マーカス・モンゴメリーに手紙を送ることである。彼が手紙を受け取ると、ラジオの宗教番組『夕べの祈り』『宗教の時間』に、『賛美歌13番』をリクエストする。これが流されるとニューヨーク・タイムズ紙に「13年式G型(またはG13型)トラクター売りたし」という広告と連絡先が掲載されるので、そこに連絡する。
ウィキペディア「ゴルゴ13」(架空の人物)における「主な連絡ルート」より
先の記事における「雌のトタテグモ『ナンバー16』が死んだ」と「13年式G型(またはG13型)トラクター売りたし」との類似性は明らかだろう。暗号文に特有の匂いが漂っている。
専門の学者や研究者それから政治家なども『ゴルゴ13』を座右に置いて国際情勢を学んでいるという。私には勉強のつもりはなく、ただ楽しみのために読んでいただけだが、知らず知らずのうちに世界の裏側を見る目が養われていたらしい。