佐藤文香のネオ歳時記

第4回「栗鼠」「シルバー・ウィーク」【秋】

お待ちかね!(かどうかはわからぬが)「佐藤文香のネオ歳時記」がついにスタート! 「ダークマター」「ビットコイン」「線上降水帯」etc.ぞくぞく新語が現れる現代、俳句にしようとも「これって季語? いつの?」と悩んで夜も眠れぬ諸姉諸兄のためにひとりの俳人がいま立ち上がる!! 佐藤文香が生まれたてほやほや、あるいは新たな意味が付与された言葉たちを作例とともにやさしく歳時記へとガイドします。

【季節・秋 分類・行事】
シルバー・ウィーク
傍題 プラチナ・ウィーク 白銀週間

 黄金週間と訳されるゴールデン・ウィークは春の季語とされているので、それに対抗してつくられたシルバー・ウィークという言葉は、はやめに秋の季語にしておくことにした。
 しかしこれ、「ウィーク」というほどの大型連休になるためには条件があって、ざっくり言えば年によって変動する秋分の日が、たまたま水曜日じゃないとダメなのだ。土曜→日曜→月曜・敬老の日(ハッピーマンデー制度により第三月曜)→火曜・祝日にはさまれたから国民の休日→水曜・秋分の日、このミラクルでようやく5連休となる。2018年の今年は3連休が2回で終わりなので、シルバー・ウィークとは言い難い。というだけでなく、2009年、2015年の次は2026年までおあずけと言うのだから、閏年より発生率が低い。よって、シルバー・ウィークを季語としてつかうときは、そのレアさを本意としていただければと思う(「プラチナ・ウィーク」とも呼ばれるのは、そのせいらしい)。
 さて、ゴールデンに対してシルバー、というだけでなく、敬老の日が含まれるからシルバー・ウィークでもある。しかし、思い返してみると私は、この時期に祖父母に会ったことがほとんどない。両親の実家が県外で、どちらの祖父母のところに行くのも、ほとんどの場合は長期休暇だったためである。敬老の日に祖父母に電話をしても、その意味はよくわからなかった。
 俳句をつくるようになって、40歳以上年上の先輩方と接する機会が多くなった。高校時代、外部指導者として来てくれていた先生の結社の句会に自分たちが入ると、本当に嬉しそうにしてくれる人たちがいて、自分の祖父母もきっと、まわりの若い人と話すと元気が出るんだろうなぁと思った。さらに最近は、先輩方を大事にしたい、いろいろお話を聞いておきたいという気持ちが高まっている。
 別に休みにならなくても、敬老週間としてのシルバー・ウィークでいい気もする。「週間」系季語にはほかに「聖週間(イースターの傍題)」〈春〉、「愛鳥週間」〈夏〉があり、別に休みではないのだから。今年は自分のおばあちゃんに葉書でも書こう。

〈例句〉
シルバー・ウィーク叔母と食う麻婆豆腐  佐藤文香
松に空浅く白銀週間は