佐藤文香のネオ歳時記

第6回「パラシュート」「ハロウィン」【秋】

「ダークマター」「ビットコイン」「線上降水帯」etc.ぞくぞく新語が現れる現代、俳句にしようとも「これって季語? いつの?」と悩んで夜も眠れぬ諸姉諸兄のためにひとりの俳人がいま立ち上がる!! 佐藤文香が生まれたてほやほや、あるいは新たな意味が付与された言葉たちを作例とともにやさしく歳時記へとガイドします。

【季節・秋 分類・生活(スポーツ)】
パラシュート
傍題 スカイダイビング パラシューティング 落下傘

 10月22日はパラシュートの日。1797年、世界初のパラシュートによる人間の降下が行われたからだという(出典:ウェブサイト「今日は何の日」)。その事実は置いておいても、秋といえば空の高さ。パラシュートを季語にするなら秋がよいだろう。〈パラシウト天地ノ機銃フト黙ル(西東三鬼)〉〈霊前をきまりのやうに落下傘(攝津幸彦)〉などの句は無季の句として書かれていて、どちらもモノクロのイメージだが、季語としてパラシュートをつかうなら、色のある空を詠みたい。
 恥ずかしながらスカイダイビングの現場を見たことがなく、もちろんやったこともないので、どんなものか調べてみた。まずは「一般財団法人 日本航空協会」のサイト。パラシューティングには、未経験者用の体験と競技とがあり、体験は「タンデムジャンプ」と呼ばれるらしい。2人乗りのパラシュートに「インストラクターと一体になって高度3,000mからジャンプ」する……え? そんなことしたら、インストラクターさんと恋に落ちてしまいません? と思ったが、インストラクターさん側は何度でも飛んでいるのだからそこは大丈夫なはず。体験者の気の持ちように問題があってはならないですね。競技には、グループでフォーメーションを組むもの(フォーメーションスカイダイビング)、正確に着地するもの(アキュラシー)などがあるようで、とくに「演技する選手とカメラマンが2人一組になり、高度4,000mから降下し、パラシュートを開かないで45秒間空中で演技を行なう」というフリースタイルは凄そうだ。45秒間では地上に落ちないかもしれないが、私なら確実におしっこを漏らして気を失っているだろう。カメラマンの撮影の良し悪しも審査対象だというから面白い。たしかに、空中で撮っておいてもらわないと審査できないもんなぁ。
 スカイダイビングは日本各地のドロップゾーン(DZ)と呼ばれる降下地点で見ることができるらしく、都心から近そうなのは東京スカイダイビングクラブ。東京と名に冠してはいるものの、場所は埼玉県比企郡で、桶川駅と川越駅の間あたり。ここでの体験スカイダイビングは、インストラクターのハンドカメラ撮影付きで40,000円とのこと。興味のある方はぜひ体験して、空で一句書いて降りてきてほしい。私はこれを書いているだけでおしっこがちびりそうなので、お金をもらっても絶対やりません。
 

〈例句〉
パラシウト雲間に心浮き残る  佐藤文香
本日の広さやスカイダイビング